» アドバンテッジパートナーズのやる気スイッチグループ買収の注目点は何か?

テーマバイアウトファンドによる株式会社やる気スイッチグループホールディングスの買収

平成29年6月1日、株式会社アドバンテッジパートナーズ(以下「AP」という)及び株式会社やる気スイッチグループホールディングス(以下「やる気スイッチ」という)は、やる気スイッチの全株式を、APがサービスを提供するファンド(以下、「APファンド」)が出資する特定目的会社に全株式を譲渡したと発表しました。

このニュースについてプロの視点で解説させていただきます。

「アドバンテッジパートナーズのやる気スイッチグループ買収の注目点は何か?」

2017年7月12日
川井隆史

公認会計士

当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。

はじめに

6月1日株式会社アドバンテッジパートナーズ(以下「AP社」)がサービスを提供するファンドが出資する特別目的会社(以下「SPC」)は、株式会社やる気スイッチグループホールディングス(以下、「やる気スイッチグループ」)の全株式を譲り受けました。やる気スイッチグループは傘下の子会社を通じて「スクール IE」で有名な個別指導塾・英会話スクール・幼児教育・民間型託児保育などの運営を直営およびフランチャイズの形態でおこなっています。今回SPCには株式会社リンクアンドモチベーション(以下「リンク社」)と創業者である松田 正男氏が出資してかつ社長も続投するようです。リンク社はモチベーションを切り口としたコンサルティング会社で、傘下に小・中・高等学校を対象 とした外国語指導講師の配置を行う民間最大手企業の株式会社リンク・インタラック、外国人材の 採用・育成・生活サポートを提供する株式会社リンクジャパンキャリアを有しています。

 

今回の買収の狙い

やる気スイッチグループは未上場会社であり、今回の買収についても特に発表などは行っておりません。AP社のプレスリリース等を見るかぎり経営基盤を強化して将来上場を目指すようです。リンク社の出資については将来の買収見込みなのか、それともプレスリリース通り純粋に外国語ネイティブ講師の採用・育成・生活支援機能の提供を通じ、やる気スイッチグループが展開する英語教育関連事業の成長・発展を支援するだけなのかは不明です。

ただし、今回AP社のホームページを見るとこの買収は「事業承継」型として分類されているのは興味深いです。社長の松田正男氏は1948年生まれのようなのでもうすぐ70歳になり、次世代の経営陣にバトンタッチしたいと考えられても不思議はありません。経営陣を見る限り「松田」姓の方はいませんので世襲はなさそうで、かつその他の経営陣の方々はAP社から参加の喜多 慎一郎氏を除いてネット等で検索しても全くヒットせずあまり存在感はありません。あくまでも想像ですが世襲がない一方、ワンマン会社の常で次世代の経営陣が育っていないということで、AP社に託したということころなのではないでしょうか?

 

AP社の強み

AP社のHPを見るとわかるのですが、ファンドに対するステレオタイプな見方である単なる人員削減によるコストカットに頼るのではなく、コストの全面的洗い直しや社員を巻き込んだ組織改善やマーケティング戦略の見直しに基づく売上・収益拡大など多面的な支援が特徴としています。メンバーを拝見するとベインやマッキンゼーといった戦略コンサルティング経験者が多く、投資銀行経験者は比較的少ない部分がこのあたり標ぼうするゆえんかと思われます。加えて個人的見方かもしれませんが、経営陣を連れてくる目利き力が優れているのではないかと思われます。ファンドでよくハンズオンを標榜しているところはあるのですが、比較的事業会社の経営には不慣れな方に経営を任せて人心が離れてしまう失敗例は結構あった気がします。AP社の場合、コメダ珈琲の立て直しなどは例なのですが外部から元ファーストキッチン社長の布施氏をスカウトしてマーケティングや多店舗展開などは任せる一方、自身のネットワークでフランスパンを買収してパンの内製化を行うなどうまく外部の力と自身の力をうまく融合させていると思います。私も以前企業の経営陣であったころファンドから声がかかったことが何回かありますが、面接で明らかに実力不足なのに非常に高飛車な態度のファンドの担当者の方もいる一方、非常にビジネスに対す造詣も深く勉強されている上、非常に謙虚に会社や候補者に接する方などかなりファンドの担当者の器量に差があったのは認識しています。AP社はその点経営陣選定の目利き力が良く、うまく内部と外部の資源を利用しているのが成功の秘訣だと思われます。

おそらく近い将来松田氏の後継をAP社が外部から招へいして上場への基盤固めをしていくというシナリオではないでしょうか。このあたりの外部への事業承継うまくいくか注目だと思われます。

その他専門家コラム

  • 「やる気スイッチグループHDの買収とFCの動向」

    阪野公夫

    弁護士

    阪野公夫法律事務所 代表(愛知県弁護士会所属) 1974年生まれ。早大卒。2003年に弁護士登録。主に愛知県や名古屋市における、中小・中堅企業の倒産や事業再生・M&Aの案件に携わる。最近では、コア部門の事業譲渡と清算を行う第二会社方式による再生案件に数多く関与。企業破産や破産管財人での実績も多数。2013年3月には「金融円滑化法終了を踏まえた事業再生の最新実務とM&Aの活用方法」の講演を共催。

  • 「バイアウトファンドによる株式会社やる気スイッチグループホールディングスの買収」

    藤原宏高

    弁護士

    弁護士法人ひかり総合法律事務所、代表弁護士の藤原宏高です。
    2006年~2014年までミネベア株式会社社外監査役、2016年~現在は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの社外監査役を務めております。
    これまで顧客本位のリーガルサービスを目標として,ワンストップサービスを実現させるべく海外法律事務所ともネットワークを構築し,中小企業の海外進出支援や,中小企業の事業承継とM&A取引などに積極的に取り組んで参りました。