» やる気スイッチグループHDの買収とFCの動向

テーマバイアウトファンドによる株式会社やる気スイッチグループホールディングスの買収

平成29年6月1日、株式会社アドバンテッジパートナーズ(以下「AP」という)及び株式会社やる気スイッチグループホールディングス(以下「やる気スイッチ」という)は、やる気スイッチの全株式を、APがサービスを提供するファンド(以下、「APファンド」)が出資する特定目的会社に全株式を譲渡したと発表しました。

このニュースについてプロの視点で解説させていただきます。

「やる気スイッチグループHDの買収とFCの動向」

2017年7月12日
阪野公夫

弁護士

阪野公夫法律事務所 代表(愛知県弁護士会所属) 1974年生まれ。早大卒。2003年に弁護士登録。主に愛知県や名古屋市における、中小・中堅企業の倒産や事業再生・M&Aの案件に携わる。最近では、コア部門の事業譲渡と清算を行う第二会社方式による再生案件に数多く関与。企業破産や破産管財人での実績も多数。2013年3月には「金融円滑化法終了を踏まえた事業再生の最新実務とM&Aの活用方法」の講演を共催。

2017年6月、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズ(アドバンテッジ社)が、ファンドを通じて学習塾運営等のやる気スイッチグループHD(やる気スイッチGHD 未上場)の買収を発表しました。

やる気スイッチGHDは、中核事業が個別指導塾の「スクール IE」であり、さらに英語の学童保育の「Kids Duo」や英語スクール、小学校受験教室等を運営しており、全国でフランチャイズを含めグループ全体で1317教室を展開しており売上高は約160億円となっているとのこと。

子どもの「やる気スイッチ」を押す場面のテレビCMが印象的です。

 

少子化が進む中で、やる気スイッチGHDはアドバンテッジ社に買収されることにより、第二の創業を進める一方、事業基盤を40年に渡り築き上げた創業者の松田正男氏は、アドバンテッジ社の出資する特別目的会社に一部出資することにより、引き続き株主に留まり社長を続投するとの報道がなされています。

また、本買収に際して買収の主体となる特別目的会社には、コンサルティング会社のリンクアンドモチベーション(リンク社)も一部を出資するとのことであり、リンク社が関連会社を通じて有する、外国語ネイティブ講師の採用・育成ノウハウについて、やる気スイッチGHDの英語教育関連事業とのシナジー効果を企図する計画となっています。

 

この買収において注目すべきは、やる気スイッチGHDの中核事業である個別指導塾の「スクール IE」が全国的にフランチャイズ展開をしており、今後もフランチャイズ展開を拡大する方針であることです。

やる気スイッチGHDの「スクール IE」の本部運営校とFC校との割合や、他の教室におけるFC校の割合、どのようなフランチャイズ契約かといった詳細は不明ですが、本部(やる気スイッチGHD)と加盟店(FC校の運営側)との間で、今後、今回の買収後の方向性についてどのような合意がなされているのか、興味深いと考えています。

フランチャイズ契約は、商圏を拡大し、また全国的な広報宣伝活動など、プラスの面が多々あろうかと思います。

他方で、少子化が進む中で、FC店のテリトリーの設定や競合、また契約期間の問題(FCが契約である以上、いつかは契約終了という事態が生じることも考えておかなければなりません)など、通常の全国展開している業態とは大きく異なります。

 

もちろん、今回の買収にあたり、関係当事者はFCの問題は十分に検討した上で買収を進めているものと考えられます。

また、やる気スイッチGHDは、買収による豊富な資金力を背景として、さらに全国的な広報活動を強化し、ブランド力を高めることが予想されます。

さらに、リンク社との英語教育関連事業に関するシナジー効果も期待できます。

ただ、このような方向性が、すべてのFC校にとってプラスとなるのか、それとも一部のFC校の拡大だけがもたらされるのか、この点は買収後の動きを見てみないと分かりません。

 

昨今、少子化が進んでおり、大手学習塾が運営する塾を閉鎖するというニュースが話題となる中で、やる気スイッチGHDが中核事業だけでなく様々な教室運営についてFC展開をしているという特性は、同社の成長のカギを握っていると考えられます。

すなわち、今回の買収の成否のカギは、FC展開が握っているのではないかと考えられるのです。

今後の展開が注目されます。

その他専門家コラム

  • 「バイアウトファンドによる株式会社やる気スイッチグループホールディングスの買収」

    藤原宏高

    弁護士

    弁護士法人ひかり総合法律事務所、代表弁護士の藤原宏高です。
    2006年~2014年までミネベア株式会社社外監査役、2016年~現在は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの社外監査役を務めております。
    これまで顧客本位のリーガルサービスを目標として,ワンストップサービスを実現させるべく海外法律事務所ともネットワークを構築し,中小企業の海外進出支援や,中小企業の事業承継とM&A取引などに積極的に取り組んで参りました。

  • 「アドバンテッジパートナーズのやる気スイッチグループ買収の注目点は何か?」

    川井隆史

    公認会計士

    当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。