» ココカラファインによる調剤薬局・介護事業のシニアコスモス買収について

テーマ調剤薬局のココカラファインがシニアコスモスの株式を取得

平成29年6月5日、株式会社ココカラファインは、調剤薬局・介護事業を展開する株式会社シニアコスモスの株式取得を発表した。

株式会社ココカラファインは、エリアにおけるドミナントを深耕するとともに、調剤事業と連携した訪問介護・居宅介護支援事業への拡大、及び既存介護事業の拡充を図ることで「地域におけるヘルスケアネットワークの構築」を加速させていく方針。

株式会社ココカラファインの成長戦略を考察します。

「ココカラファインによる調剤薬局・介護事業のシニアコスモス買収について」

2017年7月19日
飯島康央

弁護士

弁護士 飯島康央
紀尾井町法律事務所所属。2000年4月弁護士登録。2015年度第二東京弁護士会副会長。2015年6月からパルシステム生活協同組合連合会員外監事を務めています。
離婚や相続問題、交通事故や消費者事件などの他、企業間の法的トラブルに関する訴訟事件や契約書の作成、審査、債権回収、労務問題など、中小企業の法務支援にも力を注いでいます。

1 はじめに

東証一部上場で関東では「セイジョー」、関西では「セガミ」等のドラッグストアを展開している株式会社ココカラファインが、東京において調剤薬局や介護事業を展開している株式会社シニアコスモスの発行済全株式を取得すると発表しました。取得価格は非公開とされています。

 

 

 

 

2 ドラッグストア業界の現状

ドラッグストア業界は、2000年以降も店舗数や売上げを着実に伸ばしつづけていました。それは、少子高齢化が進む日本の社会において、高齢者の割合が年々高まり、ドラッグストアに対する社会的な役割に対する期待が高まってきていたからと考えられます。高齢者の人口割合はこれからも増加することが見込まれており、市場規模は今後も拡大すると思われます。

他方で、他業界からの新規参入や競合他社同士の競争、インターネットでの販売も解禁されたこと等により、近年は、業界全体の成長も鈍化してきており、特に都市部においては店舗の飽和状態にもなりつつあると言われています。

大手企業などでは、他業界との連携やM&Aを積極的に行うことで拡大戦略を図ることが見られるようになってきました。

 

3 ココカラファインの理念と事業拡大

ココカラファインは、「人々のココロとカラダの健康を追求し、地域社会に貢献する」ことを経営理念とし、競争戦略として「おもてなしNo.1」になること、社会的使命として「地域におけるヘルスケアネットワークを構築する」「社会に必要とされるすぐれた人材を育成する」ことを掲げています。

ココカラファインは、上記理念を基礎として、数多くのM&Aを繰り返して事業を拡大してきた企業であると言えます。すなわち、2008年に株式会社セイジョーとセガミメディクス株式会社との経営統合により、ココカラファインホールディングスを設立したことをはじめとして、2009年には介護事業を展開するタカラケア株式会社の株式を取得し子会社化、2010年には株式会社アライドハーツ・ホールディングスとの合併、株式会社いわいのドラッグからの営業の譲受、2011年には北海道旭川で調剤事業を展開する有限会社メディカルインデックスの株式を取得し子会社化、2012年には、東京埼玉で13店舗を展開する株式会社ABCドラッグのドラッグストア・調剤事業の譲受、2013年には、山口県を中心にドラッグストアを展開する株式会社岩崎宏健堂の株式を取得し子会社化、2016年にも、株式会社神戸マルゼンや東洋薬品株式会社から、それぞれ調剤薬局を譲り受ける等、毎年、他社との合併や営業の譲受、株式の取得による子会社化を進めて、現在、全国に約1300の店舗数を持つ企業にまで拡大しました。

今回のシニアコスモスの株式取得も、上記理念の実現と事業拡大の一環として行われたものと考えられます。

 

4 シニアコスモスの買収による効果

  シニアコスモスは、世田谷に調剤薬局を、新宿、中野、調布、用賀、田園調布、仙川に介護事業を展開している会社です。今回の買収におけるシニアコスモス側の事情は明らかではありませんが、親会社であるテスコ株式会社は廃棄物処理施設の管理や水処理施設の管理、ビル管理などを行っている会社であることから、本件買収により、介護事業や調剤事業からの撤退となります。

他方で、ココカラファインから見ると、今回の買収は、東京西部地区における調剤事業と連携した介護事業の拡大を図ることができ、「地域におけるヘルスケアネットワークを構築する」というココカラファインの社会的使命・経営理念を実現することにつながります

明確な経営理念に基づく買収であることがはっきりとうかがわれます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5 株式取得によるM&A

M&Aの具体的な方法としては、合併や営業の譲受け、株式取得による子会社化等がありますが、ココカラファインは、その時の事情を適切に考慮して、それぞれの方法を使い分けて実行しています。

例えば、大規模な経営統合や複数の会社との経営統合等の場合には合併を選択し、又、ある会社の1事業や複数ある店舗の内の特定の店舗だけを譲り受ける場合には営業の譲受を選択しています。そして、ある会社から事業全体を譲り受ける場合には、株式取得による子会社化を選択しています。今回の買収も、シニアコスモスという1社の事業の全部を譲受けるものであることから、合併や営業の譲受という方法ではなく、株式取得による子会社化を選択したものと考えます。この方法によれば、調剤事業及び介護事業を開設している法人に変更はないため、あらためて医薬品医療機器等法や介護保険法などの許可や届出等をする必要なく、そのまま事業を継続することができるというメリットがあります。

 

6 まとめ

ココカラファインは、今後も、明確な経営理念に基づいて、その時の事情に応じた適切な方法を選択し、M&Aを行って事業の拡大を図っていくものと思われます。

以上

その他専門家コラム

  • 「ココカラファインのM&A成長戦略とは ~シニアコスモス買収に関連して~」

    小林幸与

    弁護士・税理士

    明治大学法学部卒業後の昭和61年から弁護士活動開始。結婚出産子育てを経て、平成9年より豊島区池袋にて弁護士活動を再開。その後、東京税理士会に登録して税務分野に拡大。法人化を機会に平成26年東京銀座に進出。現在は、弁護士法人リーガル東京と税理士法人リーガル東京の代表として、銀座本店と池袋支店で弁護士5名・税理士2名の体制にて、相続税務や事業承継を含む相続全般・不動産関係に特化した事務所を経営する。

  • 「~ココカラファインのM&Aに見る調剤事業・介護事業の連携~」

    中野友貴

    弁護士

    クレア法律事務所所属弁護士。
    2010年慶応義塾大学総合政策学部卒業、2012年北海道大学法科大学院卒業。ベンチャー企業支援を主な業務とする現事務所に所属し、法務デューデリジェンス、契約書の作成・審査、サービスの適法性審査など、ベンチャー企業にかかわる法務支援を総合的に取り扱う。
    著書として『IoTビジネスを成功させるための法務入門』(第一法規株式会社)。

  • 「㈱ココカラファインのドミナント戦略」

    多田昌弘

    公認会計士・税理士

    多田総合会計事務所代表。東京大学経済学部経営学科卒。PwCコンサルティング㈱でERPや連結会計システムの導入コンサルティングに従事後、公認会計士二次試験に合格し監査法人トーマツに入所。法定監査や上場準備監査、M&Aのデューデリジェンスに従事。2004年に独立開業し、ゴルフ場や製造業のPMI(M&A後の統合業務)に従事。IT企業やヘルスケア企業の税務顧問、財務アドバイザリーを数多く務める。