プロコメ

2017.7.19

調剤薬局のココカラファインがシニアコスモスの株式を取得

2017.7.19

~ココカラファインのM&Aに見る調剤事業・介護事業の連携~

中野友貴
中野友貴 弁護士 プロフィールを見る

平成29年6月5日、株式会社ココカラファインは、株式会社シニアコスモスの全株式を取得することを発表しました。このM&Aは、大規模な買収案件ではありませんが、調剤・介護業界におけるM&Aの特徴を示すものとして好例と思われます。

各企業について

ココカラファインは、ドラッグストア事業・調剤事業を主要な事業としています。ドラッグストア事業においては、全国1304店舗を展開し、ドラッグストア業界トップクラスの店舗数を有しており、調剤事業においては、調剤報酬額500億円以上など調剤業界トップクラスの実績を有しています。同社は、他にも介護事業も行っており、ヘルスケア事業を幅広く行っております。

売上の構成比としては、平成29年3月期では、99.4%がドラッグストア・調剤事業、0.6%が介護事業となっており、ドラッグストア・調剤事業が主要な事業です。

一方で、買収されたシニアコスモスは、ココカラファインと同様に、調剤事業、訪問介護サービス、居宅介護支援サービスを行っている企業です。ただし、調剤の事業所は、世田谷区に1店舗有している一方、介護事業の事業所は、新宿区、中野区、世田谷区、大田区、調布市などに展開しています。

調剤事業買収の目的

今回のM&Aは、主に以下の目的がプレスリリースされています。
①エリアにおけるドミナントの深耕
②調剤事業と連携した訪問介護・居宅介護支援事業の拡大
③既存介護事業の拡充
まず、シニアコスモスの調剤事業を取得するメリットを検討したいと思います。

ドラッグストア事業・調剤事業の主要な顧客は、店舗近隣に居住する住民です。このような地域住民に対する販売網を充実させるためには、出店エリアの拡充が重要になります。今回のシニアコスモスが展開している世田谷区のエリアには、既にココカラファイングループの店舗が出店しており、このようなエリアにシニアコスモスが展開した店舗を取り込むことによって、一層の経営効率化が図られます。

これに加えて、ドラッグストア事業・調剤事業においては、安定的な顧客を創出するロイヤルカスタマー化戦略などが重要になります。このため同業各社は、会員カードの発行などにより、安定的な顧客の獲得を図っています。ココカラファイングループも同グループ店舗発行ポイントカードと、ココカラクラブカード、スマートフォン向けココカラ公式アプリの連携をキャンペーンなどによって促し、安定的な顧客の獲得を図っています。このような会員の獲得・会員情報の集約は、インターネット販売の拡大に向けてより重要になるものと思われます。

ココカラファインは、2017年3月期において、調剤薬局のM&Aを5件行っていますがこのようなメリットの享受を目的としたものと思われます。

介護事業買収の目的

次に、ココカラファインがシニアコスモスの介護事業を取得するメリットを検討したいと思います。

介護事業の利用者は、薬の処方を受けることや介護用品を必要とすることが多く、介護事業と調剤・ドラッグストア事業間には一定のシナジーが見込めます。このため、調剤事業を行う企業が介護事業を展開する例は数多くあります。今回の買収においても、ココカラファインは、調剤事業とのシナジー効果を期待したものと思われます。

また、ココカラファインが展開している介護事業の拡大も期待されます。先述したように、介護事業の売上構成比は、0.6%に留まるため、事業の規模としては現在、大きくありません。しかし、ココカラファインは、地域におけるヘルスケアネットワークの構築を目指しており、医療・介護の連携を図っています。このような連携が進めば、医療機関、介護施設、調剤薬局間の情報の共有などによって、地域密着型のサービスを展開できます。このような目的の実現のために、訪問介護・居宅介護支援事業の拡充が求められ、今回のM&Aに至ったものと思われます。

買収したシニアコスモスが介護事業を主要業務としていることから、今回の買収により、ココカラファインが介護事業とドラッグストア・調剤事業との連携を進め、更なる展開を見ることができるでしょう。

最後に

医薬品のインターネット販売などが注目される一方で、調剤・介護などの事業分野では各事業の連携による地域密着型のサービスの提供がより注目されています。今回のM&Aはこのような連携を目指した布石として期待され、今後の動向に注目していきたいところです。

その他専門家コラム

最新のプロコメテーマ