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2017.7.27

アマゾンのホールフーズ買収

2017.7.27

アマゾンによるホールセール買収

花澤健司
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2017年6月16日にアマゾンがホールフーズの買収を発表した。買収金額はホールフーズの債務も含め137億ドル(約1兆5200億円)となり、アマゾンが行う買収案件としては過去最大規模である。この買収によりアマゾンは、ホールフーズの株主に1株当たり42ドル支払うことになる。これは発表前の同社の株価からみると約27%上回る水準である。

最近のホールフーズの業績は下降傾向にあり、株価も2013年10月をピークに半値水準で推移していたことを考えるとかなりアグレッシブな価格水準での買収と考えることができ、市場からも驚きをもって見られているようだ。

今回の買収の目的はアマゾンにとって、生鮮食料品網や実店舗やデータといわれているが、アマゾンがどのような思惑で買収したのかは経営戦略の専門家に任せるとして、このような巨額の買収が行われた場合の会計の影響、特に正ののれんの会計処理の日米IFRS差を交えて少し考えたい。



ホールフーズの直近の純資産(2017年4月9日現在)は約34億ドルであり、債務は約32億ドルとなり合計は約65億ドルとなる。このような買収の場合、資産・負債を時価評価し、時価純資産を計算することになる。現時点でのホールフーズの時価純資産はわからないが、おそらくは買収金額から債務を差引いた105億ドルは超えないであろうし、仮に時価純資産が倍額の約67億ドルあったとしても、38億ドルののれんが発生することになる(105億ドル-想定時価純資産67億ドル=38億ドル)。これを執筆時点のレート(1ドル=112円)で換算すると、4256億円という巨額ののれんがアマゾンの連結財務諸表に計上されることになる。

日本でも時価総額より高い買収等は行われているが、その場合は今回と同様に正ののれんが計上されることが一般的であり、その際問題となるのは、のれんの償却である。のれんの償却については、日本、米国、IFRSで異なる処理がなされる。その概要は以下の通りである。なお、今回は正ののれん(買収金額が時価純資産を上回るケース)のみを取り扱う。

日本基準 米国基準 IFRS
のれんの償却 定額償却(買収の効果が及ぶ期間内での償却ただし、最大20年間) 償却しない 償却しない
減損テストの実施 減損の兆候がある場合のみ実施 毎期減損テストを行う 毎期又は減損の兆候がある場合にはいつでも減損テストを実施する
減損損失の認識 のれんを含む資産グループの帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを下回る場合、減損損失を認識する のれんを含む報告単位の簿価が公正価値を下回る場合、減損損失を認識する のれんを含む資産生成単位が回収可能価額を下回ってる場合は認識する

最大の違いは、のれんの償却を行うか否かである。日本基準では、最大20年での定額償却となるが、米国基準及びIFRSではのれんの償却はせず、減損テストの結果、測定したのれんの公正価値よりものれんの帳簿金額が大きい場合にのみ減損損失を認識する。

簡単に言うと、のれんを約38億ドルとすると、日本基準では毎年約2億ドルのコスト増加要因(20年償却の場合)であるが、米国基準やIFRSであれば、買収先(今回はホールフーズ)の価値が減少しない限り、のれんに関連するコスト負担はないことになる。

一方で、米国基準やIFRSは減損テストを毎年する必要があること及び、減損テストの結果、減損損失を認識する必要がある場合は、減損(巨額であることが想定される)となるため、減損損失を認識する事業年度の業績を大きくゆがめる要因となる。


今回お伝えしたいのは、どの会計基準が正しいということではなく、会計基準によって今回のケースのように買収時には大きく会計処理が異なるということをご理解いただきたい。また、日本基準が決して問題があるというわけでもない。ただし、買収側からの視点で見た場合、毎年必ずのれんの償却負担があるというよりは、米国基準やIFRSのように償却負担ないというほうが良いととらえられることが多いのも事実である。今後は大型MAを繰り返す企業にとっては、のれんの償却を嫌い、日本で上場しているがIFRSや米国基準を採用する企業も増えると考えられる。また、財務諸表利用者の立場からは、このような会計基準の差を理解して、その会社の財政状態を把握することは大切であると考えられる。

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