プロコメ

2017.8.18

大黒屋ホールディングスと株式会社ブランドオフの資本業務提携の覚書について

2017.8.18

一味違う大黒屋HDによるブランドオフの買収 -日本企業がM&Aで失敗しないために

川井隆史
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はじめに

大黒屋ホールディングス(以下「大黒屋HD」)が6月15日、ブランドオフを買収すると発表しました。国内と香港、台湾に50店を展開するブランドオフとの協業で拡大を図り、ブランドリユースと質事業での世界ナンバーワンを目指します。大まかな仕組みとしては中国CITIC XINBANG ASSET MANAGEMENT CORPORATION LTD.(以下、「CITIC」といいます。)が大黒屋HDの子会社である株式会社エスビーオー(以下「SBO」)に30%出資したのちこのSBOがブランドオフの株式を100%取得します。ブランドオフとの資本業務提携の最終締結後には事業再構築のため追加出資等を行う予定です。

今回の買収の狙い

今回は業界第二位の大黒屋(売上約206億円)による三位のブランドオフ(売上約201億円)の買収であり、売上合計は業界第一位のコメ兵の約401億円を抜いて第一位になる可能性が高いです。これは典型的なセールス型(営業型)です。詳細はhttps://ma-jouhouhiroba.jp/wp02/procmmt_column/20161123003/ を参照していただければと思いますが

「営業とは基本的に1件1件顧客を獲得していく活動であるが、M&Aは投網で掬うように一気に顧客ベースを拡大する広い意味での営業活動」という意味でのセールス型としています。ブランドオフは国内及び海外(香港及び台湾)に50店舗を展開し、400名を超える従業員を擁しており、一気に顧客ベースを今回のM&Aで投網を使って掬うように拡大していく、ここが狙いと思われます。

一味違うポイント

今回のM&Aのディールの条項を見るとセールス型(営業型)として一般的な日本企業にありがちな業界一位に目がくらみ無理に焦って買収するといった失敗を避ける試みが巧みにされています。以下プレスリリースからの引用です。「本資本業務提携の実行は、①本資本業務提携に関する最終契約が締結されること、②ブランドオフ、ブランドオフの既存金融機関及び当社間において、当社が合理的に満足できるブランドオフの事業計画(当社との業務提携を前提としたブランドオフの店舗再編及び従業員の再配置等の取り決めを含みます。)について合意できること、③本資本業務提携のために必要な資金のCITIC からの調達が完了していること等が前提となります。」

①は当たり前だと思うのですが②の部分は非常に重要です。つまり最終合意の前にきちんとPMI(買収後統合)のプランを作成してそれが合意に至らない場合は実行されないということです。日本企業でなかなか買収契約締結までに店舗再編や従業員の再配置などのPMIプランまできっちり決めて締結できる会社はなかなかありません。

そのほかにも事業再編で追加出資の可能性を言及しておりますが、追加出資を含めたすべての出資は20億までと決めてずるずる深入りはしないと宣言しているのも、いい意味で慎重です。

加えて、③であるように中国最大級の金融グループであるCITICと「あなたがお金入れないとこのディールなくなるよ」といったギリギリの厳しい交渉をやり切るというのもなかなかないことです。それ以前にCITICと中国で合弁会社を展開しており、CITICと、もともと関係性は深いという部分はあるとは思われますが、そもそもCITICのような巨大金融グループと東証2部上場レベルの企業の提携は不思議に思われます。

これについて、大黒屋HDは再生ファンドが母体であり社長の小川浩平氏もアジアを中心に活躍されたファンド経営者であることが大きな要因でしょう。そういった意味でM&Aの手法が洗練されているのもレベルが高いプロフェッショナルが関わっていることを考えれば当然と思われます。

記事を読んで推測するにブランドオフは爆買いブームが沈静化で経営危機に陥ったものの大黒屋HDはこのように厳しい交渉を当初からしていたためある程度時間がかかったのはないかと思われます。しかし、最終的には最良の経営判断として傘下にはいったということでしょう。CITICをからませるといった大胆な手法をとりながらも、条件は細かく慎重に詰めていくといった「大胆かつ慎重」な比較的成功しやすいM&Aの事例かと思われます。

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