プロコメ

2017.9.20

KDDIによる、「IoT」関連のベンチャー企業、ソラコムの買収について

2017.9.20

ソラコムはなぜIPOではなくバイアウト(売却)というエグジット(出口)を選んだのか?

川井隆史
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はじめに

KDDIがIoT通信プラットフォーム「ソラコム」の株式を取得して連結子会社化しました。詳細はまだ明らかにされていませんが新聞記事などでは約200億円で過半数を取得などと書かれています。ソラコムはIoT通信のプラットフォーム事業のベンチャーで2014年11月の創業です。創業後半年余りの2015年6月にはInfinity Venture Partners(以下、IVP)およびWorld Innovation Lab(以下、WiL)から7.3億円を調達し、2016年5月以降にはシリーズBラウンドでやはりIVPとWiLやスパークスグループなどから約30億円調達しています。

今回の買収についての推測

連結子会社化といっても正式な東京証券取引所への適時開示はなく不明なことが多く、ある程度想像で書いている面はご容赦ください。今回はIVPとWiLという比較的アーリーステージに強いベンチャーキャピタル(以下VC)の意向が強いのではないかと思われます。

その理由の一つとしてIVPへの主要投資家としてKDDIがあがっていることもあります。そして、アーリー段階としては巨額と言える資金調達をしていることからもかなりの株式割合をVC側が保有していたと想像されます(優先株を発行してVC側の議決権をある程度制限していた可能性もありますが詳細不明です)。資本準備金を含む資本金が約37億円で外部資本が単純な足し算で約37億になるのでほとんど資本金は外部資本のように見えます。オーナー側は持株がおそらく少なく、一般論としては資本政策の失敗ともいえます。しかし、社長の玉川氏としては自分の持株割合よりも資金を早く調達してスピード感をもって経営を展開していく方向を選択したのではないかと思われます。また、IVPやWiLとの信頼関係も強かったのかもしれません。

そしてエグジット(出口)戦略として公開してVCの持分が不特定多数の株主に分散するのであれば少しでも事業に理解のあるKDDIに株を持ってもらったほうが望ましいというのが今回のKDDIによる買収になったと想像されます。

今回の買収の行方と課題

ソラコムにとっては巨大資本の資金力によるグローバル展開の加速度化やKDDIのメガ通信キャリアとしてのビジネス基盤とソラコムの通信プラットフォームの組み合わせができ、今までのMVNO(仮想移動体通信事業者)であった時よりも素早い事業展開ができるという利点があると思われます。IoTの場合、大企業であっても最初はスモールスタートで比較的小資本で試験導入というケースも多いのでその入り口をソラコムでしっかり捕まえ、将来大規模に展開するときにはKDDI のサービスと組み合わせ大きく展開していくといった方向性が理想的な方向性ではないかと思われます。

KDDIは起業家支援プログラム「KDDI ∞ Labo」をはじめ、KDDIはこれまでも積極的にスタートアップを支援してきたという実績はあるので比較的組みやすい相手と言えるでしょう。

しかし、KDDIは上場企業であり特にグローバルに迅速に展開するといった際の意思決定において一定のプロセスを踏む必要があります。また、コンプライアンスの意味でも親会社であるKDDIに対し報告をきちんと行いKDDIはそれをきちんとモニタリングしていく必要性があります。記憶に新しいのはDeNAの医療系キュレーションサイト「WELQ」で起こした騒動で、ベンチャー企業らしい自由な社風が単なる子会社の放任になってしまい大きく全社的なブランドイメージを損ねる結果となってしまいました。KDDIの場合、かなりコンプライアンス面や内部統制面は厳しく運用されている企業と思われますのでその点は比較的懸念は低いかもしれません。しかし、一方大企業なりの意思決定の遅さやリスク回避的な行動がベンチャー企業の創造力を殺してしまう懸念点はあります。ベンチャー企業を傘下に持つ場合、スピードや自由さとコンプライアンスや内部統制とのバランスをどうしていくかは大きな課題だと思われます。

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