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テーマKDDIによる、「IoT」関連のベンチャー企業、ソラコムの買収について

2017年8月2日、KDDIは、「IoT」関連のベンチャー企業、ソラコムの買収を発表しました。買収金額は約200億円と言われています。ソラコムは、従業員数約40人、創業3年未満というスタートアップ企業であり、このようなスタートアップ企業が、これだけ大型規模で買収されるというのは、国内でも珍しいケースになります。このニュースについて、プロの視点で解説いたします。

「KDDIによるソラコムの買収」

2017年9月20日
藤原宏高

弁護士

弁護士法人ひかり総合法律事務所、代表弁護士の藤原宏高です。
2006年~2014年までミネベア株式会社社外監査役、2016年~現在は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスの社外監査役を務めております。
これまで顧客本位のリーガルサービスを目標として,ワンストップサービスを実現させるべく海外法律事務所ともネットワークを構築し,中小企業の海外進出支援や,中小企業の事業承継とM&A取引などに積極的に取り組んで参りました。

1.はじめに

KDDI株式会社(以下「KDDI」という)と株式会社ソラコム(以下「ソラコム」という)とは、2017年8月2日、KDDIがソラコムの発行済株式を取得する株式譲渡契約を締結し、KDDIはソラコムを連結子会社とする予定であると発表した。

ソラコムは、通信プラットフォーム「SORACOM」を提供するMVNOで、IOTの普及に必要なモバイルデータ通信回線を使ったクラウド上でのIOT管理ソリューションを提供する創業2014年11月10日のベンチャー企業である。

クラウド上でIOTを管理できるソリューションを開発するという柔軟な発想から、ソラコムの顧客は自らIOT用の通信インフラ等を構築することなく、独自のIOTシステムを構築できるようになる。

このように柔軟な発想で開発された「SORACOM」は市場の注目を集め、短期間で開発資金を集めることにも成功し、わずか創業3年でビジネスは急速に拡大した。

その矢先に、データ通信のインフラを提供する大手通信会社のKDDIがソラコムを買収して連結子会社化するというニュースは、市場を驚かせたに違いない。

 

2.買収スキーム

日本経済新聞社の2017年8月16日付報道によると、買収スキームは正式には公表されていないが、KDDIはソラコムの株式の過半数を約200億円で買収した模様である。

「株式の過半で200億円だから、ソラコム全株の価値は200億強〜400億円弱と評価されたことになる。過去の資金調達から推測すると、ソラコムの純資産は30億円程度。すると、ソラコムは純資産のざっと6〜13倍の価値があるとKDDIに認められたことになる。」(https://article.auone.jp/detail/1/3/6/7_6_r_20170827_1503781323757701)。

未公開企業の企業価値の判定は、DCF法に基づく複数の企業価値の試算をもとに、最後は企業間の交渉によって決定されるが、KDDIはソラコムには極めて高い企業価値があると評価したものと思われる。他方、買収価格のうち、純資産額を超える部分は暖簾として処理されるものと思われるので、買収後、当初の事業計画が狂い、赤字が継続するなどの不測の事態が発生すると、巨額の減損リスクを抱えることになる。

企業のM&Aには、かかる減損リスクが潜んでいるので、その経営判断は慎重に行わなければならないが、減損リスクがあっても買収を決断することも必要であり、簡単にその是非を評価することはできない。

 

3.今後の進展

市場にとって最も気になる点は、KDDIがソラコムを独占し、KDDI以外のモバイルデータ通信回線を使用させないことであるが、ソラコムは、「今後、海外の通信キャリア向けにサービスを展開するには通信会社との深い関係が重要です。KDDIは第1のお客さんではありますが、KDDI以外の通信会社に対してもサービスを提供していくことを合意してもらいました」(https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ09HJF_W7A810C1000000/)と述べているので、KDDIの買収の狙いは、モバイルデータ通信回線を提供するKDDI側として、MVNOであるソラコムの経営基盤を強化し、IOTの普及を加速度的に促進することにあると思われる。

また、将来は、ソラコムをMVNOの枠を超えて、IOTに特化したデータ通信ソリューション企業として発展させてゆくことができれば、日本経済の発展に大いに貢献するものと期待される。

以上

その他専門家コラム

  • 「ソラコムはなぜIPOではなくバイアウト(売却)というエグジット(出口)を選んだのか?」

    川井隆史

    公認会計士

    当時世界最大級の会計・コンサル企業であったアーサーアンダーセン、米コカ・コーラやGEなどのグローバル企業で事業計画やM&A後のインテグレーション責任者など従事後、その経験を生かし外資系日本法人のCFOや上場ベンチャー企業の役員などを経て創業。現在ハンズオン・CFO・パートナーズ㈱ 代表取締役社長として PMI業務(買収後統合業務)や外資系企業・ベンチャー企業の外部CFO業務、経営改善・税務会計コンサルティングなどを行っている。

  • 「KDDIによるソラコムの買収と独占禁止法への影響」

    加藤一真

    弁護士

    敬和綜合法律事務所所属。東京大学を卒業後、2006年に弁護士登録。2013年、ベルギーのルーヴェン大学にてEU法の法学修士を取得。2014年まで、米国ワシントンDCのクリアリー ゴットリーブ スティーン&ハミルトン法律事務所にて執務し、多くの国際カルテル案件に関与。日本に帰国後は、独占禁止法、金融規制法、EU案件、M&A案件など、多数の渉外案件を中心に取り組んでいる。