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2017.11.15

ネスレのブルーボトルの買収について

2017.11.15

ネスレの米ブルーボトル買収から得られる貴重な教訓

金子博人
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1.「メーカーがサービス会社になる」は、米GEの前CEOのジェフリー・イメルトの言であるが、これに限らず、今や、インダストリー・インターネットや、ドイツのインダストリー4.0といわれているとおり、世界中でイノベーションの嵐が吹きまくっている。

メーカーは、もはや、「いいものを作れば売れる」と威張っていては競争に取り残される。消費者の趣向、需要に直接応じられる、「売れるものを作る」のでなければ、市場から淘汰される時代なのだ。

2.2017年9月14日、世界最大の食品メーカーであるネスレ(スイス)が、高級コーヒーのカフェを展開する米国のブルーボトルコーヒーを買収したというニュースが飛び込んできた。

ブルーボトルコーヒーの創業は2002年だが、米国西海岸を中心に店舗展開を拡大し、東京にも進出して高級感のあるカフェを展開し、話題になっていたところだ。同時に、オンラインショップで、スーパープレミアルなコーヒー製品も販売している。

まさに、ブルーボトルコーヒーは時流に乗って、今後の展開が期待されるが、所詮、新興のベンチャー企業である。なぜ、世界最大の食品メーカーのネスレが買収したかといえば、「サービス業になる」ためである。現に、これ以前にも小売業を買収しているし、今後も、サービス業の買収を仕掛けていくはずである。

3.ところで、今回の買収は、買収価格4億2500万ドルで、ブルーボトル株の68%を取得したと、欧米メディアは伝える。

日本の感覚だと、超大企業に株の68%ももたれると、子会社化して、成長の勢いが阻害されるのではないかと心配になるが、それは危惧であろう。欧米企業は、ベンチャー企業の育て方をよく知っている。事実、ネスレ側は、今回の買収に当たり、経営には関与しないと強く表明している。新興企業を育てるためには、これが原則である。経営関与は、頼まれたときか、企業実績が悪化した時だけに限られるべきなのだ。

また、アメリカの会社法も、このことをよく心得ている。州によって内容は異なるが、所有と経営の分離が徹底しており、68%、つまり、株式の3分の2を確保しても、株主による会社支配はできない。定款変更に対し、拒否権はあっても株主提案権はなく、取締役選任も会社提案が通りやすい仕組みになっているのだ。その代わり、株主が会社経営に不満であれば、容赦なく株を売却してしまうのがアメリカだ。実にドライである。

4.日本の事情からすれば、買収でなく、新規株式公開(IPO)をすればいいのではないかとの意見も出そうだ。

確かに、日本のベンチャーはIPOが好きだ。ベンチャーキャピタルもそれを期待するし、ベンチャー側も、それが成功の証だと信じている。

しかし、世界レベルでみると、ベンチャー企業はIPOに慎重だし、ベンチャーキャピトルは、新たなスポンサーに売却して、創業資金を回収しようとする。なぜならば、公開すると、株主の意向を気にせざるを得ず、リスクのあるイノベーションに挑戦できなくなるからだ。

5.いずれにしても、本件の買収は、ガラパゴス状態の日本の企業社会にとり、貴重な教訓を与えれてくれる、価値ある教材になるはずである。

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