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2017.11.22

注目されるクラウドファンディングの課題と展望

2017.11.22

クラウドファンディングが日本の投資形態を変えるー草の根ファンドレイジング

鼎博之
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クラウドファンディングの起源

去る10月10日、クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」を運営する株式会社マクアケは、歌舞伎役者の市川海老蔵氏からの出資を受けたことを発表した。最近良くマスコミで見聞きするクラウドファンディングの多様性と将来の可能性を探ってみたい。

この「クラウドファンディング」の発祥地は米国で、Crowd(一般大衆)とFunding(ファンディング)を掛け合わせた概念である。つまり、様々な社会的問題を解決するアイデアを実現するためのプロジェクトを立ち上げた企画者に対する、大衆の資金による出資活動を総称して、クラウドファンディングと呼んでいる。このように、プロジェクト企画者の「思い」や「アイデア」に対する一般大衆からの「共感」や「賛同」を得られるかどうかが、クラウドファンディングの成功と失敗を分けるキーポイントである。

このような大衆からの資金出資は、古くから日本人になじみのある募金活動や資金の融通手段と無縁ではない。例えば、神社仏閣の修理に対する資金の寄付活動(ご利益という心理的な対価が得られた)や、頼母子講(たのもしこう)、無尽(むじん)、模合(もあい)による同郷同士や業界の団体の知り合い同士の資金の融通に至るまで、信用金庫や銀行などの近代的な資金融資機関が発展する以前は、日本で様々な場面で実際に行われてきた資金融通手段である。

2011年の東日本大震災で、東北地方の伝統的地場産業が壊滅的被害を受けた際に、事業再興資金を全国の支援者から募集して事業を復活させた事例などで、クラウドファンディングが世間の注目を浴びた。

クラウドファンディングの発祥地である米国では、2012年に成立したJOBS法(Jumpstart Our Business Startups Act)により、振興企業に対するクラウドファンディングに対する規制が緩和され、街でホットドッグを屋台で販売する者から、革新的な製品に至るまで、様々なアイデアに投資をする大衆の投資が紹介された。例えば、Kickstarter (https://www.kickstarter.com)は、アート、 コミック、 クラフト、 ダンス、 デザイン、 ファッション、 フィルム&ビデオ、 フード、 ゲーム、 ジャーナリズム、 ミュージック、 フォトグラフィー、 パブリッシング、 テクノロジー、 シアターといった様々なジャンルについての投資を世界中から集めている。

世界でも、日本でも、クラウドファンディングは、少しでも社会的意義のあるプロジェクトに出資し、一定のリターンを受けつつ、賛同するプロジェクトに貢献したいという人々の需要を満たしている。クラウドファンディングは、一般大衆のイノベーションの力と、インターネットという簡易なコミュニケーションツールが合致した場合に、強力な社会変革のパワーを生み出すという現代型社会イノベーションの一場面である。

クラウドファンディングのパターン

クラウドファンディングは、資金の性格と出資者への出資の見返り(リターン)の種類によって、4つのパターンに分類される。

1.寄付型

集めた資金を全額寄付金に充当し、資金出資者へのリターンは原則的に存在しないパターンである。勿論、出資者には社会的に意義のある事業に貢献することができたという、満足感や充実感は得られるが、経済的な意味のリターンは存在しない。但し、認定NPO法人や社会福祉法人のように、寄付者に対する税金上の控除を受けられるものは、経済的にメリットがある場合もある。

例えば、JapanGivingは、「福島の子供達に最高の遊びをプレゼントしよう」とか、「釜石市ラグビー子供未来資金」「難民支援」など寄付型のクラウドファンディングプラットフォーマーとして活動している。

2.購入型

資金出資者にリターンとして、モノやサービス、あるいは権利という特典が与えられるパターンである。たとえば、新しいアイデア製品の製作や農水産物の振興のために資金が使用される場合は、アイデア製品の製造が実現した時、または農水産物の収穫に際して、モノの分配が受けられる。また、映画や演劇、演奏などの文化活動に対して資金が充当される場合は、映画や演劇、演奏などを見たり聞いたりするサービスを受けることができるというリターンがある。

例えば、Makuakeは、世の中にない画期的な製品やサービス、さらには新店舗の誕生などを支援している。Readyforは、国際協力、文化支援、医療福祉、地域活性化、個人の夢の実現プロジェクトなどのプラットフォームを提供している。

3.投資型(ファンド型および株式型)

集めた資金は、別の投資家の株式や匿名組合持分等に充当され、資金出資者に配当というリターンがなされる。平成27年5月29日付けで施行された改正金融商品取引法により、解禁となった。

4.融資型

集めた資金は、別の資金需要者に対する貸金に充当され、資金出資者に利息というリターンがなされる。小口の資金需要者に対して、従来の金融機関では対象になりにくいプロジェクトに対して、短期資金を融通するものである。

いずれにせよ、クラウドファンディングは、プラットフォームの提供事業者やプロジェクト企画者が、インターネットという双方向のコミュニケーション手段によって、起業者と大衆という出資者がつながることができる新しいタイプの出資形態であり、草の根ファンドレイジングとして、従来の投資パターンとは別の出資機会を提供する方法である。

クラウドファンディングは、低金利下・低成長下での資金融通の旗手となりうるか

矢野経済研究所の2017年9月7日発表の調査によれば、「2016年度の国内のクラウドファンディング市場規模は、新規プロジェクト支援額ベースで、前年度比96.6%増の745億5,100万円であった。類型別では、購入型が約62億円、寄付型が約5億円、投資型(ファンド型)が約3億円、貸付型が約672億円、株式型が約0.4億円」という推計がなされている。また、「最も規模が大きい類型は貸付型で、全体の90.3%を占め、市場拡大に大きく貢献している。次いで、購入型は参入企業数が最も多いが支援額ベースで全体の8.4%であるが、年間で延べ約50万人が支援し、当業界の中で最も支援者が多かった。寄付型は年度によって増減があるが数億円規模で推移しており、年を追うごとに当該規模は増加傾向にある。投資型(ファンド型)では、大型案件が達成されると大幅に増加するが、ここ数年は減少傾向にある。」という。「2017年度の国内クラウドファンディングの市場規模は前年度比で46.2%増の1,090億400万円を見込む。」という上記推計から判断すると、認知度の高まりと共感を得るプロジェクトの増加が、クラウドファンディング成功の鍵と思われる。

インターネットによるクラウドファンディングの規制内容

インターネットを利用したクラウドファンディングには、次のメリットがある。

*インターネット利用によるコストの低減
*多くの投資家へのアプローチが可能
*小口の投資家から広く資金を集めることが可能
*インターネット上の動画や音声を用いた販売資料の活用が可能
*インターネットによるファンド組成者と一般投資家との双方向通信が可能

一方、インターネットという誰でもアクセスできる通信手段を使用することから、クラウドファンディングを実施する場合には、様々な法律上の規制に留意する必要がある。

1.寄付型クラウドファンディングの規制

①寄付を受けた側の税務問題
寄付型クラウドファンディングでは、寄付を受けた個人または法人は贈与税が課せられる可能性がある。
個人が贈与を受けた場合は、110万円の基礎控除を超えた部分に贈与税が課される。贈与を受けた法人が、公益財団法人やNPO法人ではない場合には、受贈益に対して法人税が課される。

②寄付をした側の税務問題
社会福祉法人などの公益増進法人に対して、寄付を行った個人は、寄付金控除として所得控除を受けることができる。認定NPO法人や公益社団法人などに寄付を行った場合は、所得控除に替えて税額控除を選択することも可能である。

法人が特定公益増進法人などに対して寄付を行った場合は、一定の限度で損金に算入 できる。

2.購入型クラウドファンディングの規制

①プロジェクト実施者についての規制
購入型クラウドファンディングのプロジェクト実施者は、後に述べる投資型(ファンド型および株式型)クラウドファンディングとは異なり、何らの登録などの規制はない。しかし、インターネットを通じた販売行為は、特定商取引法による通信販売に該当するため、商品または役務の価格、支払の時期・方法、商品の引渡時期、役務の提供時期、キャンセルに関する事項を表示する義務がある。また、誇大広告の禁止などの消費者保護の規定を遵守する必要がある。また、実際に、プロジェクトを実施する場合には、賛同者との売買契約を締結する当事者になるので、契約内容を誠実に履行する義務がある。

②プラットフォーマーについての規制
購入型クラウドファンディングを提供する事業者は、直接商品や役務を販売するものではないが、プラットフォームを提供する者として、特定商取引法による表示義務がある。具体的には、事業者名、運営責任者、連絡先、商品または役務の価格、支払時期・方法、商品の引渡時期、役務の提供時期、キャンセルに関する事項をホームページ上で表示する義務がある。しかし、プラットフォーマーは、プロジェクト実施者に対して、プロジェクトの場を提供し、賛同者を集める役割を果たすものであるので、プロジェクトが成立した場合には、プロジェクト実施者と賛同者間の契約に基づく権利の行使又は義務の履行は、プロジェクト実施者が自己の責任と費用の負担において行うものとなる。プラットフォーマーの利用規約においても、プラットフォーマーは、プロジェクト実施者と賛同者間の契約に基づく権利の行使又は義務の履行について、関与せず、一切の責任を負わない旨記載されているのが通常である。

3.投資型(ファンド型および株式型)クラウドファンディングの規制

①事業者の開示規制
ホームページで株式など有価証券への出資を募る場合には、不特定多数の大衆を対象にすることになるので、有価証券の募集に該当し、有価証券届出書の提出や目論見書の作成・交付などの開示規制がある。これは通常のクラウドファンディング事業者には重い規制であり、現に株式投資型クラウドファンディングは欧米と比較すると極めて少ない。

一方、匿名組合などのファンド持分を対象とする場合には、現実に持分を取得した人が500名以上の場合にのみ有価証券の募集に該当するので、500名未満の投資家が持分を取得する場合には、有価証券届出書の提出義務がない。この場合でも、少人数向け私募として、有価証券届出書が提出されていないことなど、投資家に対する投資内容の告知およびインターネットを利用した書面の交付が必要である。

さらに、重要なのは、ファンド型クラウドファンドで調達した資金は、ファンドの資金提供者から預かった資金であるため、事業者が分別管理し、投資者に対する善管注意義務に基づき、誠実に事業を運営すべきであるということである。過去、安愚楽牧場の牛への投資詐欺事件などが発生し、多くの投資家が被害を受ける事件も発生した。要は、他人の資金の拠出を受けて行う事業であれば、資金の運用やその成果である収益金は契約に基づいて、出資者に還元する義務を負うということである。ファンドの健全な発展のためには、出資者に対する説明責任を果たす事ができる事業体勢を構築することが大切である。

②投資型(ファンド型および株式型)クラウドファンディングに関する業規制
インターネットを通じて、非上場株式などに投資するプラットフォームを事業として提供する者は、第一種少額電子募集取扱業に、組合持分・匿名組合持分などに投資する場合は、第二種少額電子募集取扱業に分類され、それぞれ金融商品取引法による登録をする必要がある。

業種による分類 投資対象 投資総額

(注1)

投資家一人あたりの投資金額(注2)
第一種少額電子募集取扱業 非上場株式などの株式 1億円未満 50万円以下
第二種少額電子募集取扱業 組合持分・匿名組合持分などの集団投資スキームによるファンド 1億円未満 50万円以下

(注1)募集・私募開始日前1年以内に同一の発行者により行われた募集・私募及び申込期間の重複する同一の発行者により行われる同一種類の有価証券の発行価額の総額を合算する。
(注2)募集・私募が行われた日前1年以内に応募・払込みを行った同一発行者による同一種類の有価証券の個別払込金額を合算する。

第一種、第二種少額電子募集取扱業については、業者としての登録要件が、一般の金融商品取扱業者より緩和されており、第一種少額電子募集取扱業者は最低資本金が1000万円に、第二種少額電子募集取扱業者は最低資本金が500万円に低減されている。

これらの登録業者は、商号、存続期間、投資対象、収益分配のルール、運営者の報酬、運営者の行為制限、株式・持分譲渡、脱退、持分の償還方法などをウェッブサイトなどに表示する義務があるともに、勧誘の方法は、ホームページや電子メールによる方法に限られ、電話や対面による勧誘を行うことは認められない。

また、ファンド型クラウドファンディングについて、第二種金融商品取引業協会は、「電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則」を制定して、投資者の保護を図るよう自主規制ルールを定めている。

4.融資型クラウドファンディングの規制

①貸金業の規制
日本では、金銭の貸付けまたは金銭の貸借の媒介を業として行おうとすれば、貸金業の登録を行う必要がある。したがって、融資型クラウドファンディングでは、出資者が、直接貸し付けを行うのではなく、クラウドファンディング事業者が、匿名組合の営業者となって、投資者が匿名組合員となって、営業者との間で匿名組合契約を締結する方法をとる。営業者は、集めた資金をプロジェクト実施者に貸し付け、そこから得られた利子収益から営業者の経費を控除した残りの利益を出資者に対して、匿名組合契約に基づく配当として分配する。

融資型クラウドファンディングは、匿名組合などのファンド持分を投資者に販売するものであるが、投資者の出資価額の合計額の50%を充当して、金銭の貸し付けを行う事業であるため、第二種少額電子募集取扱業ではなく、通常の第二種金融商品取引業の登録が必要となる。したがって、第二種少額電子募集取扱業の資本金優遇措置(最低500万円)は受けられず、通常通り最低1000万円の資本金が必要である。他方、融資型クラウドファンディング業者は、「電子申込型電子募集取扱業」に該当しないため、第二種金融商品取引業協会の定める電子申込型電子募集取扱業務等に関する規則の適用を受けないことになる。

終わりに

クラウドファンディングは、1万円程度から50万円以下の少額の資金で、大衆のアイデアに基づくプロジェクトを支援するという草の根の資金提供の手段である。プロジェクト企画者にとって、多くの賛同や共感を社会から得られるかが事業成功のキーポイントである。東日本大震災や熊本地震あるいは度重なる自然災害など毎年のように事件事故が発生し、その都度支援活動が盛んになる。人々が他人に共感するという感動は何ものにも代えがたい。クラウドファンディングは、インターネットという誰もが利用できる手段で、少額の資金を、寄付、購入、ファンド投資、株式投資、資金融資という様々な分野に使用できるという人々のつながりのファイナンスである。

他方、インターネットという気軽なツールを利用する資金募集の手段であるが故に詐欺的な事業者が介入するかもしれないという危うさも潜んでいる、このような観点から上記のような様々な規制が設定されている。利用者は、このような観点から信用のおけるクラウドファンディングプラットフォーマを選択する必要がある。

クラウドファンディングは、他人の優れたアイデアに対して応援したいという人々の心に訴える社会イノベーションであり、事業者と資金提供者間の気軽なインターネットというコミュニケーションツールを通して、健全な事業の発展を共に担う役割を果たすものである。今後いかなる発展を遂げるかを期待しつつ、今後の推移を見守りたい。

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