プロコメ

2017.12.13

2017年のM&Aの総括

2017.12.18

2017年のM&Aを振り返って-M&A一服感の理由

川井隆史
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2017年のM&Aを振り返った印象を述べると東芝メモリーの買収案件を除けばわりに静かだった印象がある1年だったと思います。私の場合、M&Aというものをきちんと統計を取って分析するような立場の仲介ファームなどとは違うのであくまで印象である旨は念のため申し添えます。

1.2017年の予測との違い

2016年は3兆円ディールだったソフトバンクのアームホールディングスや同じく約9000億のアサヒビールによるSBAミラーの中東欧事業の買収、約6000億のSOMPOホールディングスのエンデュランス・スペシャリティ・ホールディングスなど海外の大型案件が続きました。日本企業の内部留保が2016年の統計によれば406兆円を超えたと財務省が発表したような日本企業の金余りおよび将来の少子高齢化の流れから見れば当然2017年も引き続き海外の大型M&Aはあるだろうと予測はしていたのですが、ソフトバンクが配車アプリの滴滴出行に5500億円出資した以外はあまり派手な海外買収はなかった印象はあります。

ソフトバンクは今年も海外で買収を行ってきましたが、継続して海外買収を続けそうな層は金融機関だと思っています。今年も三井住友海上がファースト・ キャピタル・インシュアランスを約1700億円で買収といった国内市場の縮小をにらみ海外市場へ活路をみいだすという傾向は今後も続くとは思われます

国別ではアジアは引き続き活発なものの、米国もその安定した成長が見直され少し多くなるのではないかと思われたのですが、これは外れてしまったようです。これは憶測ですがやはりトランプ大統領の存在が不安定要因になっているのではないかと思われます。

2.買収の一服感の要因

さて、この今年のM&Aの一服感の一つの要因としてのれんの問題があるのではないかと思われます。日本経済新聞の記事によれば2016年度に上場企業ののれんの総額は29兆円に達したそうです。一方同じく上場企業の純利益総額は30兆円なので単純に考えるとのれんですべての利益は吹っ飛んでしまうこととなります。

日本企業の買収においてIFRS(国際会計基準)の導入はM&Aの活発化の一つの転機になったと思われます。今までの日本の会計基準だと一定期間でのれんを償却しなければならず、その費用負担はある程度重かったといえます。しかし、IFRSでは償却は不必要なので費用負担がなく大型買収は行いやすくなりました。しかし、そのあたり必ずしもすべてうまくはいかず、減損の問題があります。簡単にいうと買収先の業績は悪いとその分のれんの価額を切り下げて一気に損失を認識しなくてはいけません。最近の例ですと日本郵政が6200億円で買収した豪トールで4000億円の減損を計上したのが記憶に新しいかと思います。このように安易な買収を行うと後で痛い目にあったというケースも続出したので慎重な姿勢に少しなったということは言えるかと思われます

3.2017年を振り返って最後に

海外企業による買収の場合は不祥事がらみの残念なケースが多かったのがもう一つの印象です。今年の主役だった東芝メモリーやタカタの買収などはその例です。こういった不祥事がらみのリスクがある案件だと日本勢の影は薄く海外勢の独壇場なのも加えて非常に残念です。

一方堅調なのは国内における顧客層を投網で掬っていく「営業型M&A」です。(この内容の詳しい説明は以下の以前の記事を参照ください。)

https://ma-jouhouhiroba.jp/wp02/procmmt_column/20161123003/

調剤薬局などで非常に目立ちウェルシアホールディングスが丸大サクラヰ薬局を買収した案件やツルハHDが杏林堂HDを子会社化する案件など、どんどん同業他社と統合する陣取り合戦が相変わらず活発です。このあたりの営業型M&Aに関してはおそらく買い手の目利き力も相当磨かれてきたと思うので、今後も引き続き堅調に推移するのではないかと思われます。

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