プロコメ

2017.12.13

2017年のM&Aの総括

2017.12.18

2017年のM&A市場の総括と2018年の展望。加速する事業承継型M&A

河本秀介
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1 2017年のM&A市場を振り返って

2017年の日本国内のM&A市場は、昨年に引き続き、景気回復基調を背景とした企業の統合が進み、件数でいえば前年と同水準か若干上回る見通しです。一方で、金額規模で言えば、外国企業による日本国内(OUT-IN)の企業へのM&A金額が前年比で増加しているものの、日本国内企業同士(IN-IN)のM&A金額は前年よりも下回ると思われます。これには、日本国内においては、大手企業同士の統合が一通り実施され、市場が一段落したとの見方があります。
その一方、大型案件でいえば、今後は、日本国内企業同士のM&Aから、日本国内の企業による外国企業(IN-OUT)の案件の増加が見込まれるとの予想もあるようです。
さて今回は、以上のような大型案件の動きから少し目線を移して、日本国内の中小企業のM&Aの動向に着目してみたいと思います。

2 中小企業の事業承継問題とM&Aの活用

日本国内における全企業のうち99%以上が資本金額または従業員数が一定以下の中小企業であり、全企業の85%が従業員数のさらに少ない小規模企業であるとされていますとされています(中小企業庁調査室2017年版中小企業白書より。下表参照)。

そうした国内企業の大半を占める中小企業では、経営者の高齢化と事業承継の問題が深刻化しつつあります。

統計によると、1995年当時の中小企業の経営者年齢のピークが47歳であったのに対し、2015年の統計では66歳と20年で高齢化が進んでいます。中小企業の経営者の引退年齢は平均して70歳前後と言われていますので、中小企業における事業承継の問題は、いよいよ企業社会における重要な課題となってきています。

これに対して、約70%の企業が事業承継を経営上の課題として考えているのに対し、民間の信用調査会社の報告では、約50%の会社が事業承継の計画を進めていないという報告もなされているようです[1]

その一方で、一般的に後継者の育成には5年から10年を要すると言われており、自社内での問題解決は容易ではありません[2]

日本の企業社会を支える中小企業が、事業の存続が可能な状態にあるにもかかわらず後継者不在により廃業を余儀なくされるとなると、雇用機会の減少や技術や知的財産の喪失などを含む、企業社会に対する損失が懸念されています。

そこで、昨今、経営者の高齢化に伴う事業承継の一手段として、社外の第三者に対する事業譲渡や株式譲渡、吸収合併など、M&Aの活用がますます重要性を帯びてきています。

また、以前であれば、M&Aには、主に機関投資家によるファンドなどによる敵対的買収が話題になるなど、何となくネガティブなイメージが付きまとっていたものですが、昨今ではそのようなイメージは薄れつつあります。また、現実問題として、核家族化が進む昨今において親子間の事業承継が難しい場合も少なくなく、事業承継の現実的な選択肢としてM&Aを検討する経営者も増えているようです。

実際に、M&Aによる事業承継のサポート業務を行う東京都事業引継ぎ支援センターが11月に発表したところによると、2017年度上半期(4月から9月)内の事業承継・譲渡に関する相談は、新規相談が前年同期比で27%増、成約に至った案件が3%増と、過去最多を記録しています[3]

3 事業承継型M&Aの加速が予想される2018年

 以上の通り2017年内において、事業承継の手段としてM&Aを選択する中小企業は増加しつつあり、経営者の高齢化が一層進む2018年以降も、より一層事業承継型M&Aのニーズが高まることが予想されます。私の所属する法律事務所でも、本年の半ばごろから、比較的小規模のM&A案件の相談が増えつつあるのを実感しています。

そのような流れを受け、事業承継を目的とするM&Aに向けた環境整備も図られつつあるようです。

まず、一部報道ではあるものの、2018年度税制改正において、事業承継の促進を目的とした改正が検討されており、その中で株式譲渡や事業譲渡に関わる税負担の軽減も検討されているようです[4]。仮に、それら税負担の軽減が実現された場合、事業承継の解決策として、M&Aの活用がより有用な選択肢として挙がってくると考えられます。

金融その他のサービスの面でも、事業承継型M&Aに向けた環境が整備されつつあるようです。

例えば、ある大手証券会社は、本年、今後事業承継等の案件にファンド形式で資金を提供するビジネスを立ち上げるとしており、ファンド設立のため多額の資金拠出を検討していることを公表しました。

現段階ではファンドの具体的な内容は公表されておらず、どのようなサービスが展開されるのかは分からないものの、今後、事業承継を目的としたM&Aに対する資金提供を目的としたサービスは増えてゆくものと予想されます。

2018年のM&A市場では、今後もニーズが見込まれる事業承継型のM&Aについてさらなる環境整備が図られることで、案件の増加が期待されると予想します。

[1] 2017年11月30日付 日本経済新聞(電子版)

[2] 中小企業庁「経営者のための事業承継マニュアル」

[3] 2017年11月29日付 日本経済新聞(電子版)

[4] 2017年11月29日付 毎日新聞朝刊

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