プロコメ

2017.12.13

2017年のM&Aの総括

2017.12.25

2017年度M&A市場の総括と展望

藤原宏高
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1 M&A市場の拡大

2017年におけるM&A市場の活況は、日本経済の活況を示すと同時に、企業経営の手法の一つとして、時間をかけて事業を育ててゆく伝統的な経営手法から、既存の事業を買収することで事業構築までの時間を買うM&A手法が広く認知されてきたことによるものと思われる。他方、事業を売却する側からみると、M&A市場の拡大により、不採算事業の売却が容易になることで、経営資産の選択と集中が可能となるなど、企業経営上のメリットははかり知れないと思われる。

加えて、このようなM&A市場の活況は、既存の銀行や信託銀行をはじめとしてM&Aを仲介する仲介業者市場へ様々な業種からの参入を招くので、仲介業者の拡大は、更なるM&A市場の拡大に寄与するものと思われる。

2 M&A市場の閉塞性

通常のM&Aのプレイヤーは、事業譲渡を希望する譲渡側企業、事業譲受を希望する譲受側企業、およびこれを仲介する仲介業者の3者である。

企業のM&Aの特性として、譲渡側企業においては、事業譲渡の直前まで、事業譲渡を社内では秘密として取扱う必要性が高い。また公開企業では、大規模なM&Aはインサイダー情報になることがあるため、譲渡側企業、および譲受側企業のいずれの立場であっても、社内で秘密として管理する必要がある。

そのため、譲渡側企業と譲受側企業とのビジネスマッチングは、もっぱらこれを仲介する仲介業者においては、秘密裏に行うことが必要不可欠となる。

そこで,すでに不動産の物件情報の共有化が不動産業者間で行われているように、多数のM&A仲介業者間で、一定の限度で、ビジネスマッチング情報の交換が可能となれば、M&Aにおけるビジネスマッチングはさらに容易になり、M&A市場はさらに拡大するものと思われる。

しかしながら、現状では、M&Aの仲介業務に関しては、これをカバナンスする業法がないため、仲介業者の手法は、報酬の取り方も含めて各社まちまちであり、重要事項説明書などの書面の交付も義務付けられていない。

また、M&A市場の拡大のためには、これを仲介する仲介業者のレベルが高くなることが期待されるが、M&Aを成立させることにより報酬を取るビジネス手法のため、どちらかというとディールを成立させることに主眼を置くことになるものと思われる。要は、仲介業者と、譲渡側企業および譲受側企業とは、そもそも利害相反となる可能性を孕んでいるのである。M&Aの当事者においては、この点をきちんと認識してディールに入る必要がある。

3 第4のプレイヤー

2017年11月29日、野村ホールディングが1000億円のファンドを設立して、自己資金投資を始めると発表したことは新たな動きである。第4のプレイヤーの登場といえよう。

ファンドによる自己資金投資は、より厳しい目で投資対象を選別し、確実に利益の出ると思われる案件に投資することが期待される半面、投資の規模は相当程度大きくなるものと思われるので、2018年度のM&A市場の活況に寄与することが期待される。

4 専門的な教育を受けた要員の確保

M&A市場の活況を受けて、M&Aにかかわるプレイヤーにおいては、M&A業務に熟知した要員の確保が急務と思われる。

特に要員の確保が必要になるのは、譲受側企業である。なぜなら、譲受側企業においては、仲介業者の提案してきたディールに対して、厳しい目で投資対象を選別し、企業価値の評価を厳格に行い、買収後の暖簾の処理まで勘案して、最終期には買収すべきかどうか判断しなければならないからである。かかる教育を受けた経験がない担当者に任せることには大きな危険を伴う。社外からMBAを取得した人材を採用するなど,専門的な要員の確保に努力すべきであろう。

実際のディールの現場では、利害が相反している仲介業者による譲渡側企業の企業評価などを鵜呑みにして、ディールに臨んでいるのではないか、危惧されるところである。

5 外部の専門家の導入

大きなディールにおいて、社内にM&Aの専門家がいない場合は、外部からM&A業務に精通した弁護士、会計士などの専門家をアドバイザーとして取り込みながら、M&Aに対応してゆくことが期待される。

なぜなら、外部の専門家に期待される事項は、譲渡側企業の法的・財務的なディーディリジェンスではなく、仲介業者側によって算定され,オファーされた買収希望額の根拠となっている本当の企業価値や暖簾の評価、買収希望額の適正さの評価、買収後の暖簾の処理方法などの経営判断事項であり、もっぱら譲受側企業による経営判断の補助的業務が期待されるからである。

以上

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