プロコメ

2018.2.21

花王によるOribe Hair Care社の買収

2018.2.21

花王によるOribe Hair Care社の買収~ブランド力強化としてのM&A

阪野公夫
阪野公夫 弁護士 プロフィールを見る

昨年12月21日、花王は、アメリカのヘアケアのカリスマといわれる高級ブランド「オリベ」を買収すると発表しました。報道によると、今回の買収額は約500億円であり、花王の海外企業のM&Aでは過去最大規模とのこと。昨年の10月ですが、花王は2017年1月~9月期の連結決算(国際会計基準)が前年同期比5%増の1377億と発表しました。中国や国内で紙おむつ等の売れ行きが好調とのことです。

他方で、花王の唯一のウィークポイントは国内の化粧品事業、ともいわれていました。花王化粧品のブランド力の弱さが響き、他社はインバウンド(訪日外国人)需要を取り込み化粧品事業で利益を伸ばしているにもかかわらず、花王は利益を伸ばせず、他社との差が開いている、との報道もありました。

このような状況において、花王による「オリベ」の買収が発表されました。「オリベ」は、カリスマスタイリストとして知られるオリベ・カナレス氏が2008年に立ち上げた高級ブランドであり、主力のサロン向けシャンプーは1本5000円~1万円と高額ながら、米富裕層を中心に高い支持を集めているといわれています。花王が、自社の化粧品のブランド力を強化しようという明確な目的をもっていることは明らかでしょう。ただ、法的な視点で考えた場合、以下のような課題があると考えられます。

まず、花王が「オリベ」を買収したことによって、米ヘアケア市場での「オリベ」の地位に大きな影響は無いものと思われます。今まで通りカリスマスタイリストの知名度や高級ブランドとしての商品力を活かして、売上げを確保していくのではないかと考えられます。

課題は、「オリベ」が培ってきたヘアケアの高級ブランドとしての商品開発力やノウハウを花王がどこまで吸収できるのか、さらに花王の化粧品事業にどのように活かしていくのか、という点かと思われます。おそらく、花王と「オリベ」の買収に関する契約書には、「オリベ」の商品開発力やノウハウを開示することが明記されていると考えられます。もちろん、商品開発力やノウハウは重要な企業機密なので、それを開示することは「オリベ」にとっては重大な問題になります。

しかし、花王にとってみれば、単に商品開発力やノウハウが開示されたとしても、それだけで自社の商品開発力やブランド力の強化にはつながりません。重要なことは、「オリベ」が花王にどの程度まで協力する義務を負うのか、花王と「オリベ」間でどこまで人材交流が進むのか、という点だと考えられます。

企業の「ブランド力の強化」といっても、一朝一夕に結果が出るものではありません。ましてや、企業が「他社との比較において劣勢」と考えている事業部門において「ブランド力の強化」を図ることはより一層困難なケースが多いと考えられます。

ですので、花王が「オリベ」=米ヘアケア業界の高級ブランドを買収したことによって、短期的な結果を追い求めず、中長期的な見地から自社との人材交流による経験値の獲得、さらに「オリベ」からの協力をどこまで引き出せているのか、という点が今回の買収の成否を分けるカギになると思われます。

花王が「オリベ」との買収合意において、「オリベ」からどういった協力を取り付けているのか(そのために事前の契約交渉でどの程度の情報開示がなされたのか)、この点が重要になってきます。

具体的には、「オリベ」と共同での商品開発やコラボ商品の販売、「オリベ」の知的財産権の利用や顧客情報といった、極めて秘匿性の高い情報が開示されなければなりません。

はたして花王が「オリベ」とどのような合意によって、今回の買収に至ったのか、興味深いところです。今後の花王の化粧品ブランド戦略の動向が注目されます。

その他専門家コラム

最新のプロコメテーマ