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2018.2.21

花王によるOribe Hair Care社の買収

2018.2.21

花王によるオリベヘアケアの買収 -P&GとUnileverの背中は近づいたか?

川井隆史
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はじめに

花王は昨年12月21日、米日用品大手、ラグジュアリー・ブランド・パートナーズ(フロリダ州)から、ヘアケアブランド「オリベ」を展開するオリベヘアケア(ニューヨーク州)を買収することで合意した旨を発表しました。買収価額は開示されていませんが500億程度と新聞等では伝えています。「オリベ」は一流のヘアサロン業界と、米国の主要専門小売店で大きな存在感を持つ存在で、「花王グループは同社を買収することにより、ヘアサロン事業においてスーパープレミアムブランドおよび製品を獲得し、事業ポートフォリオの拡充と顧客基盤の拡大を実現することができる」とプレスリリースで述べています。

花王の現状

花王は2017年の決算で売上は1.5兆円弱まで成長して過去最高益更新、営業利益率も13.7%と日本企業では屈指の優良企業だといえるかと思います。ただし、彼らの目指す2大消費財メーカーであるP&GやUnileverと比較してしまうとまだまだ背中は遠いかもしれません。両社の年間売上はそれぞれ約7兆円近く、そして経常利益率(Operating Margin)はP&Gが約21%、Unileverが17.5%と規模でも収益性でも大きく水をあけられています。そして花王の経営陣も明らかに気付いていることではありますがこの2強と比べるとまだまだ花王は日本の国内企業でしかありません。P&Gの場合、売上のうち国内である北米は45%、Unileverに至っては国内といえるヨーロッパは24%であり、花王の売上の72%が日本国内であるのに対し対照的な結果になっています。このグローバルな展開力がまだまだ弱いというのがこの買収の背景にはあると思われます。

そして花王が手本とするUnileverでさえ、昨年2月クラフト・ハインツによる約15兆円での買収提案を受ける状況であることを考えれば花王としても将来世界のビックプレイヤーに飲み込まれてしまうのではないかという危機感は持っているのだと思われます。

今回の買収の狙い

この買収は花王の中期経営計画「K20」が目指す最終的に目指すグローバルで存在感のある会社を目指す目標達成のためのひとつと言えるとは思います。グローバルな展開力の問題は前述しましたが、アジアに限って申し上げれば前年比16.8%の売上の伸びを達成し対全世界売上比率も15%くらいまで伸びてきてある程度目算は整いつつあるのかもしれません。一方、欧州や北米市場においては成長率も低く、両方合わせても11%くらいの対全世界売上比率しかなく非常に花王としては低調な状況が続いているといえるかと思われます。そういった意味では北米や欧州におけるプレゼンスを高めるという意味では今回の買収は一定の効果が見込めるとは思われます。

加えて今回から化粧品セグメントとスキンケア・ヘアケア製品セグメントを合わせてビューティというセグメントに変更しましたが、化粧品部門は花王の中では爆買いの影響などで資生堂やコーセ―などが利益を上げている中、不振が目立っていたといえると思われます。このセグメントをテコ入れして今後の成長ののりしろにするという意向が見えます。

ヘアケアではUnileverは”mods hair” 、P&Gでは“Vidal Sassoon”といた代表的美容室ブランドのヘアケア製品がありますのでこれに対抗する意味でも効果はあるかもしれません。

今後の展望

ただ、売上7兆円の企業に対抗するにあたって500億程度の買収はまだまだ小粒なものでしかありません。Unileverは昨年12月に約9000億でマーガリン事業をKKRに売却しており、クラフト・ハインツの買収提案を受けて大胆に事業構造の再構築を狙っています。例えば少なくともこのレベルの企業に少しでも近づくためには今後千億円単位のレベルの買収は俎上に載せていかなければ背中が近づくことはないのではないかというのが実感ではあります。

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