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2018.3.29

RIZAPグループ、ワンダーコーポレーションを子会社化

2018.3.29

RIZAPグループによるワンダーコーポレーションの2段階によるM&A

河本秀介
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1 2段階の手続による連結子会社化

株式会社RIZAPグループ(以下「RIZAPグループ」といいます。)は、平成30年2月19日、エンターテインメント商材等の小売・リユース販売を行う株式会社ワンダーコーポレーション(以下「ワンダー社」といいます。)との間で資本業務提携契約を締結し、今後、RIZAPグループがワンダー社株式の過半数を取得し、同社を連結子会社化する予定であることを公表しました。

RIZAPグループは、ワンダー社を連結子会社化した後、ワンダー社の店舗にフィットネスジムを併設することで集客を図ったり、RIZAPグループ商品やグループ傘下の印刷会社を活用することによるコスト削減等を行うなどの方策を取るとしています。

さて、RIZAPグループは、ワンダー社株式を取得するにあたって、①株券等公開買い付け(「TOB」)及び②第三者割当増資の2つの手続を取ることを公表しています。このうち①TOBについては、買付けの相手方として、ワンダー社の筆頭株主である株式会社カスミを予定しており、カスミがTOBに応じ、同社が保有するワンダー社株式の全て(2,404,200株、ワンダー社の発行済み株式の総数に占める株券等所有割合が43.11%に相当)をRIZAPグループに売却することについて合意が成立しているということです。この点についてワンダー社は、同日開催の取締役会において、RIZAPグループによる公開買い付けに賛同の意見を表明しています。また、②第三者割当増資については、ワンダー社はTOBの終了後、普通株式1,980,000株を発行し、RIZAPグループがその全てを引受けるとしています。

そして、これら両手続の結果、RIZAPグループがワンダー社の発行済株式の58.00%以上を所有することが予定されています。

今回は、RIZAPグループによるワンダー社の連結子会社化の手続面について解説したいと思います。

2 公開買い付け(TOB)

 (1) TOBが必要な場合

今回、RIZAPグループがカスミからワンダー社株式の譲渡を受けるにあたり、TOBによる方法を取るとしています。特定の株主から株式の大口譲渡を受けるような場合、立会外取引や、取引所外での相対取引の方法で行われる場合もありますが、本件ではそのような方法は取られていません。これは、RIZAPグループ・カスミ間の株式譲渡が、その規模からTOB強制の対象となるため、立会外取引等の方法を取ることができないことによるものと考えられます。

ワンダー社は、本公表日現在、東証JASDAQ市場に上場する株式会社です。金融商品取引法上、上場会社の株式について、取引所市場外で一定規模を超える大量の買付け等を行おうとする場合、TOBの方法によらなければなりません(金融商品取引法27条の2)

具体的にいえば、買付後に予定する買付者の株券等所有割合が5%を超える場合、買付けは、原則としてTOBの方法による必要があります(「TOB強制」)。かかる原則に対し、そのような買付けが「著しく少数の者」(具体的には60日間で10名以内の者)からの買付けであれば、上記原則の例外としてTOBの方法が強制されません。しかしながら、上記例外の更に例外として、買付後の株券等所有割合が3分の1を超える場合には、TOBの方法による必要があります。

今回、RIZAPグループが買付を予定するのはカスミ1社であり「著しく少数の者」から買付ける場合にあたります。しかしながら、RIZAPグループはカスミの所有株式を全て取得することを予定しており、TOBによる買付後の株券等所有割合は最低でも43.11%になることが予定されています。すなわち、買付後の株券等所有割合が3分の1を超える場合にあたります。

そのため、RIZAPグループとしては、カスミが所有するワンダー社株式の全てを取引所外で買付けるためには、立会外取引や取引所外取引によるのではなく、TOBによらなくてはなりません。

 (2) TOBによる規制

TOBを行う場合、買付等を行おうとする者(公開買付者)は、買付等の目的、価格、予定数量、期間その他内閣府令で定める事項を公告した上で、公開買付届出書を提出しなければなりません(同27条の3)。また、公開買付者は、原則として公開買付期間中に応募があった株券等の全てについて公開買付届出書に記載した買付条件に従って決済する必要があります。すなわち、公開買付者は、特定の株主だけでなく、原則としてTOBに応募してきた株主の全てから株式を買い取る必要があります。

これについては、公開買付者による公開買付後の株券等所有割合が3分の2を下回る場合には、買付にかかる株式数に上限を設けることも可能です。しかしながら、上限を設けた場合で上限を超える応募があった場合には、買取対象となる株式は按分比例の方法により決定しなければなりません(同27条の13第4項、施行令14条の2の2)。すなわち、上限を設定した場合、上限を超える応募があれば本来買取りを予定している株主が所有している株式の一部を買取れない可能性が出てきます。

本件では、RIZAPグループは、カスミとの間の合意により、カスミが所有するワンダー社株式の全てを取得することが予定されていますが、TOBにかかる株券等の数に上限が設けられていないのは、カスミが所有する株式の一部を買取れなくなる事態を回避するためだと思われます。結果として、RIZAPグループとしてはTOBに応じた株主の全てから株式を買い取る必要があります。

 (3) 上場廃止の可能性

本件では、RIZAPグループによるワンダー社の連結子会社化が完了した後も、ワンダー社の上場が維持されることが予定されています。もっとも、TOBの結果いかんによっては、JASDAQの定める以下の上場廃止基準に抵触する可能性があり(東証有価証券上場規程601条1項1号ないし3号、604条の2)、上場廃止となる場合もあることが公表されています。

① 事業年度の末日における株主数が150人未満であり、かつ、1年以内に150人とならないとき
② 事業年度の末日における流通株式の数が500単位未満であり、かつ、1年以内に500単位以上とならないとき
③ 事業年度の末日における流通株式時価総額が2.5億円未満である場合において、1年以内に2.5億円以上とならないとき

前述の通り、RIZAPグループはTOBに応じた全ての株主から株式を買取らなければなりません。そのため、想定外の多数の株主がTOBに応募した場合、上記①から③のいずれかに抵触する事態が起こりえます。その場合、RIZAPグループは、一旦買取った株式を立会外分売の方法で不特定多数に譲渡するなどして、上場廃止を回避するための方策を講じなければなりません。

3 第三者割当増資

  ワンダー社は、上記TOBの成立を前提条件として、第三者割当増資の方法により普通株式1,980,000株を発行し、RIZAPグループがその全てを引受けることを予定しています。

TOBにより取得を予定しているカスミ所有の株式を加えると、RIZAPグループによるワンダー社の株券等保有割合は58.00%以上になるとされています。この場合、株主の一部が反対した場合、手続が遅れる可能性があることが示唆されています。第三者割当増資により、新たに議決権の2分の1を超えて株式を所有する者(「特定引受人」)が現れる場合、発行体の会社は、当該株式の代金支払期日の2週間前までに、既存の株主に対して特定引受人の氏名等を通知しなければなりません。そして、通知から2週間以内に、総株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が特定引受人による引受けに反対する旨を会社に通知した場合、支払期日の前日までに株主総会決議による承認を受ける必要があります(会社法206条の2)。

RIZAPグループは、TOBを実施する以前はワンダー社の株式を所有してないため、TOBの結果取得する株式数によっては、第三者割当増資の結果、“新たに議決権の2分の1を超えて株式を所有する者”になる可能性があり、上記特定引受人の規制を受ける可能性があります。

4 TOBの結果と今後の見通し

 さて、上記の第1段階にあたるTOBは平成30年3月22日をもって既に終了しており、翌23日にその結果が公表されました。それによると、TOBに対して、3,691,812株(カスミ所有の2,404,200株を含む数)の応募があり、RIZAPグループはその全てを買受けることになります。これにより、TOB後におけるRIZAPグループの株券等所有割合は66.20%になります。

公表によると、公開買付後の方針等について特段の変更はないと公表されていますので、TOBの結果、懸念されていた上場廃止基準に抵触する可能性が生じたということはなさそうです。よって、今回のM&Aによって、ワンダー社の上場が廃止されるということはないと思われます。また、RIZAPグループはTOBの結果により、第三者割当増資の時点で既に議決権の過半数にあたる株式を取得するに至ったと思われますので、上述した特定引受人の規制を受けない可能性が高いと思われます。

なお、TOBが終了した段階で既に、RIZAPグループによるワンダー社の連結子会社化は達成されています。しかしながら、ワンダー社としては、RIZAPグループとの間の業務資本提携契約において、第2段階にあたる第三者割当増資によりRIZAPグループから資本金が注入されることを前提にTOBに賛同しているものと考えられますので、TOBにより連結子会社化が達成された場合でも、第三者割当増資は予定通り実施される見通しです。今後、手続が順調に進捗した場合、RIZAPグループによるワンダー社の株券等保有割合は最終的に75.05%になることが見込まれています。

近年、RIZAPグループは中核事業のヘルスケア分野に留まらず、多様な事業分野の企業をM&Aにより連結子会社化しています。今回、エンターテインメント分野に強みを持つワンダー社を連結子会社化することになりますが、どのようなシナジーが生まれるのか、今後に注目したいと思います。

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