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2018.4.20

ピーチとバニラエアの経営統合について

2018.4.20

ピーチとバニラの統合 -ANAの狙いは何か?

川井隆史
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はじめに

ANAホールディングス傘下(以下「ANA」のPeach Aviation(以下「ピーチ」とバニラ・エア(以下「バニラ」)が2019年末をめどに経営統合するということを3月19日発表しました。そして「これまで培ってきた関空・成田などを拠点とした路線ネットワークのさらなる拡充に加え、魅力的な運賃設定や期待を超えるサービスの実践、様々なイノベーションを通し、国内外の潜在需要を喚起し、新しいマーケットを切り拓いてまいります」のように「新しいマーケットを切り拓いていく」ための統合と述べています。この2社の統合についてユニークな点そしてANAのこの統合のM&A戦略は何だったのかを見ていきたいと思います。

2社の歩み

 まずピーチですが関西空港を拠点としたLCC(ローコストキャリア)で2017年3月期の売上高517億円は国内2位。最終利益は49億円で、4期連続の最終黒字を計上しています。ピーチに対するANAの出資比率は当初38.7%でしたが、2017年4月に株式を買い増して連結子会社化、現在は67%を出資しています。
 一方バニラはANA100%出資の完全子会社ですが、もともとはマレーシアのエアアジアと共同出資したエアアジア・ジャパンという会社でした。エアアジアが撤退したため、その持分を買い取り名前も現在の名前になっています。売上高は239億円で、2016年3月期に初めて黒字計上したものの、2017年3月期は7億円の損失を計上しています。
 この2社を比べるとピーチの成功が際立っているといえるかもしれません。ピーチの場合、メディアなどではピンクで統一したカラーコーディナネートや元AKBの篠田麻里子と組んだ「キュート&クール」のコンセプトなどマーケティング的な面が強調されるところが多いようです。当然このあたりも成功要因ではありますが、「空飛ぶ電車」と表現したような徹底的な簡素化によるローコストオペレーションとそして欠航率の低い安心感がこの企業の基盤をさせていると思われます。そのため、チェックインはすべて自分で行い時間が来ると無慈悲に出発、ただしそのため欠航や遅延も非常に少ないとうことになります。そしてターゲットを「大阪のおばはん」に絞りビジネスマンなどは基本的に対象にしない絞り込みでLCC戦争を勝ち抜いた勝者と言えます。

特徴と展望

このピーチとバニラの経営統合の狙いを見ていきましょう。一つはピーチが関空、バニラは成田が拠点といった部分で相互補完関係にあるといったところはあるでしょう。また、この統合により合算756億円で、ジェットスター・ジャパンの528億円を抜き、国内で圧倒的な首位に立ちます。そのうえでの大きな狙いはそしておおむね7時間くらいの中距離LCCに参入し、売上高1500億円、営業利益150億円規模を狙っていくことのようです。しかし、このあたりはオーストラリアのジェットスターやマレーシアのエアアジアなどの強力な競争相手がいるマーケットです。そういった意味での規模拡大による経営基盤の強化が目的でしょう。
 ただ、この経営統合には非常にユニークな点があります。それは明確に「ピーチを基盤に経営統合」とアナウンスされている点です。普通の経営統合のプレスですと「お互いの強みを生かし・・」といった趣旨のものが多いですがここでは明らかにピーチ主導ですべてを見直していくといった姿勢が明らかに表れています。このような明確な姿勢は組織内の妙な忖度や政治的な駆け引きを減らしスピード感をもって統合を加速化できると思われます。
ANAにとってこのピーチの子会社化から統合に向かう道は以前このコラムで述べた営業型のM&Aではなく戦略型M&Aであるといえます。いわゆるANA本体の手掛けている事業(フルラインの航空サービス)の展開ではなく、新たな事業(LCC)の展開であるということです。フルラインとLCCは同じ航空運輸サービスですがその文化やビジネスの進め方は明らかに違います。営業型M&AではANAへの統合が重要な課題ですが戦略型M&Aの場合はむしろある程度距離を置いて統治することが重要になります。このあたりの微妙な距離感のかじ取り、ANAは巧みな統治ができるかは非常に興味深い部分ではあります。

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