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2018.5.16

ハイセンスによる東芝のテレビ事業買収

2018.5.16

ハイセンス(中国のテレビ最大手)による東芝のテレビ事業買収

小林幸与
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1、 はじめに
株式会社東芝(以下「東芝」と言います。)は、2017年11月14日、赤字が続くテレビ事業であった連結子会社の東芝映像ソリューション株式会社(以下「東芝映像ソリューション」と言います。)を、中国電気大手の海信集団グループ(以下「ハイセンス」と言います。)に売却することを公表しました。そして2018年2月28日、本件株式譲渡が完了したことが公表されました。
東芝は、東芝映像ソリューションの株式を100%保有していたところ、
その95%の株式を約129億円でハイセンスに譲渡しました、残り5%の株式は東芝が引き続き保有しています。

2、 東芝の株式譲渡の事情
東芝は、原子力発電事業の巨額損失で財務内容が悪化したため、非中核事業の売却処分を急いでいました。東芝映像ソリューションは、「レグザ」ブランドでテレビの製造・販売をしていますが、同社のテレビ事業は、赤字が続いていました。東芝映像ソリューションは、2017年3月期で約118億円の債務超過に陥っていました。このため東芝は、東芝映像ソリューションを売却することにしましたが、東芝の売却益(税引き前)は約250億円になる見込みのようです。
東芝側の発表によれば、「映像事業については、当社単独で更なる経営資源の投入及び競争力強化施策の実行は困難な状況でした。東芝映像ソリューションの競争力と企業価値を高め、映像事業を継続的に発展させるためには、優れた経営力と資源を有するハイセンスをパートナーに迎え入れることが最適と判断しました。また当社は、東芝映像ソリューションが製造・販売する家庭用テレビ等の映像関連機器におけるブランド使用権を継続して許諾します。」としています。

3、 ハイセンスが買収した事情
ハイセンスグループは、海信電器と海信科龍電器の2つのグループ企業から構成されています。従業員数約1万6000名、売上高716億人民元(日本円で1兆2000億円以上)で、主要製品は、家電製品・通信機器・情報機器であり、現在中国でのテレビメーカーとしては最大手で、世界的には第3位のテレビメーカーといわれており、年間1800万台規模の生産規模を誇っています。
ハイセンス側が説明する買収理由としては、第1はブランド力、第2は技術力、第3はハイセンスと補完関係を持つこと、だと説明しています。
そしてハイセンスとしては、3年以内の黒字転換を目標に、収益力を回復するとし、そのためには従業員のやる気を引き出す工夫に注力する考えだと言います。一般的に、中国の家電メーカーが海外でブランド力を樹立するのは困難だと言われます。グローバル企業大手との激しい競争がある上、各国消費者が持つ固定的なブランド認識を改めさせる必要もあります。したがってハイセンスとしては、自社固有ブランド(ハイセンス・科龍・容声)の育成とともに、競業他社の国際ブランド買収も現実的な選択肢といえます。今回のハイセンスによる東芝映像ソリューションの買収は、そのような現実的な選択であったと考えられます。

4、 買収の事業展開について
ハイセンスグループは、企業のグローバル化を加速させており。2015年に北米市場でシャープブランドの供与を受けています。そして東芝映像ソリューションを買収後は、双方の研究開発、サプライチェーンとグローバルルートの資源を統合し、市場規模を向上させ、グローバル化をさらに加速させるものと思われます。
東芝映像ソリューションとしても、ハイセンスのスケールメリットを生かして品質を落とさず生産コストを下げられる可能性が出てきます。
これまでは親会社東芝の経営問題などから成長のための投資ができにくかったのですが、ハイセンスの傘下になったことで、技術開発力と商品販売力を強化できるようになると思います。
このようにブランド力ある企業を大手企業が買収することは、買収する企業側にもメリットがありますが、買収された企業側にとっても企業再生の効果が期待できるものなのです。

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