プロコメ

2018.6.7

武田薬品による製薬大手シャイアー買収について

2018.6.7

武田薬品の壮大なチャレンジ

中原 陸
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武田薬品工業の売上は約1.75兆円。シャイアーの売上は約1.7兆円。売り上げ規模的にはほぼ同等です。
一方で純利益ベースではシャイアーが武田薬品工業の約3倍、営業CFベースでも約2倍と、買収される側であるシャイアーのほうが高収益であることが分かります。
事業上の相当なシナジーが見込めること、またシャイアーが高収益な会社であることが買収の理由・目的になると思われますが、このような大きなチャレンジに潜むリスクを一方で紐解きたいと思います。

買収スキームは以下の通りです。
◆約6.8兆円でシャイアーの発行済み全株式を武田薬品工業が取得する
◆その内約3兆円を現金(借入)で支払い、残りは武田薬品工業が発行する新株で手当てする=株式交換

最も懸念されているのは、武田薬品工業グループの有利子負債、即ち借金が大幅に増加することです。武田薬品工業が前期末時点で保有していた有利子負債は約1兆円強。これに、シャイアー株買収のために新たに借り入れる約3兆円と、シャイアーが保有する有利子負債約2兆円がのっかり、計約6兆円の有利子負債を保有する企業に一変します。元々は年間で約2500億円ほどの営業キャッシュフローを生み出す会社が、その5倍ほどの借金を持っていたにすぎなかったのですが、それが年間で約7500億円ほどの営業キャッシュフローを生み出す会社が約6兆円の借金を背負う、という事態に変ります。その返済がだいぶ長くなることに加え、単純に業績がもし不安定になった際のリスクは格段に増加します。また、銀行からの調達についてはブリッジローンが組まれることが同5月8日に発表されました。ブリッジローンとはいわゆる「つなぎ融資」のことで、例えば資金使途が生じて、しかしそのための資金が1か月後に入金される予定とした場合に、ブリッジローンにてその間をつなぐ、という役割をします。ですから、目的としては短期的な借入で、かつ融資実行までのプロセスを短期化するもので、その代わりに高金利となります。今回、約3兆円のブリッジローンについて、その内約1.5兆円は約1年後の返済を予定しており、ブリッジとしては長い期間と言えます。総額含めた支払利息は年間で1000億円程度になると見積もられており、相当に高額と言えます。

武田薬品工業のチャレンジとしては、借金を大幅に増加させる一方で大変高収益な会社をグループに入れることができます。今回のシャイアー買収による単純計算における収益貢献と、その一方で増加する有利子負債を鑑みますと、かなり大変なチャレンジに挑もうとしていることは間違いありません。しかしながら、両社は同業同士ながら、強みとしている分野は異なり、シャイアーは米国で強い会社です。この両社間で生じるシナジーが具体化してきたときに、若しくはしなかった場合に今回の買収事態に対する成否が問われるものと思われます。

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