プロコメ

2018.6.27

シダックスのカラオケ事業売却について

2018.6.27

シダックスのカラオケ事業売却のタイミングについて考える。

川井隆史
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はじめに

シダックス(株)(以下、シダックス)が5月30日付でカラオケ事業を「カラオケ館」を運営する㈱B&V(以下、BV社)に譲渡し、実質上カラオケ事業から撤退することを発表しました。もう少し具体的に言うとレストランカラオケ事業を展開する連結子会社のシダックス・コミュニティ(以下SC社)の株式の81%とシダックスのSC社に対する債権をBV社に譲渡するものです。
SC社の19%をシダックスが保持するのは引き続き食材の提供などはシダックスが引き続きやっていくという方針があるようです。

シダックスカラオケ事業の推移

 シダックスは1980年代に行っていた和食レストランの不振を補うためカラオケを導入したというのがカラオケ事業のきっかけです。その後は順調に業績を伸ばし、2003年にはSC社を設立、2007年にはカラオケ事業で売上600億円を超え、営業利益も10%近くをたたき出していました。
 シダックスの強みは大型店舗展開で食事が充実した大人数でのパーティ利用がその目玉でした。しかし、だんだんと一人カラオケなど低単価、少人数化が主流になっていくトレンドの中でこの大型店舗の固定費が足かせになってきました。さらに、この大型店舗のほとんどが10年を超える長期賃貸契約であったため、一層拍車をかける結果となりました。
 30年度のシダックスの決算短信をみるとカラオケ事業は売上170億円、セグメント損失は約10億円となっています。実は28年に一回大規模なカラオケ事業の大きなリストラを行っています。内容としては不振店の約100店を別会社であるシダックストラベラーズコミュニティ(STC)に移行。閉店可能なものは閉店し、残りは取引先を引き受け手に増資を実施、自社は持分法化とすることで損失を抑える仕組みです。残っている店舗の一部も同業他社へ譲渡したり、転貸借を進めたりするなどでかなり規模を縮小しました。28年3月期には売上約300億、セグメント損失約21億あったものが半減はしましたが、赤字を垂れ流している状況は変わっていなかったようです。

撤退のタイミング

今回、シダックスは撤退となったわけですがいつも思うのですが日本企業の事業の撤退は刀折れ矢尽きたところで撤退となるケースが多いです。それでもシダックスの場合はまだオーナー企業なのでまだ決断が早く完全に劣化しきる前なので買い手が現れました。ただ、シダックスのカラオケ事業の推移をみると2006年をピークにほぼ右肩下がりで売上は減少しており、もう少し早い決断があってもよかったのではないかと思われます。当然この事業が中核事業であれば立て直しにもっと注力するということもありますが、シダックスの中核は給食やアウトソーシング受託事業であり、カラオケのパーティから一人カラオケのトレンドの中でもう内容的にも中核事業から外れているといえます。
このあたり欧米企業は変わり身が早く、素早く決断して事業が本格的に劣化する前に高値で売り抜けてしまいます。非常にドライに感じますが実はその方が従業員にとっても長期的には優しい選択と思われます。なぜならば完全に劣化する前の売却なのでそもそも従業員も疲弊していませんし、誇りをもって今後も仕事ができます。
変に業績不振のまま事業を持ち続けられると実は非中核事業なので前向きな投資などは見込めない中、業績不振のためムチを入れ続けられることとなります。これはむしろ従業員には残酷なことです。
違う例ですが東芝が今回東芝メモリの売却でお金のなる木を売ってしまったと批判を一部から浴びていますが、もうかっているうちに非中核事業を売るというのは大切です。メモリのような大規模投資を即断即決でやっていくような事業をインフラ事業のような長期的な視点で投資していく事業が主流な企業がうまく運営できるはずもありません。

まとめ

M&Aでも今回はどちらかというと売り手の話ですが、ポイントは非中核事業というものは劣化しきるまでに売却してしまうというのがポイントです。矢折れ刀尽きて売却するのは経営的にも従業員的にも望ましいものではありません。
たまたまシダックスのカラオケ事業の社員の方に感想をお聞きする機会がありました。結構業績不振で大変だったので他の会社の下でやるのはやや不安があるもののホっとしている面もあるとのことでした。

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