プロコメ

2018.7.4

株式会社メルカリの上場について

2018.7.4

メルカリによるグローバルオファリング

上木 英典 HidenoriUeki プロフィールを見る

1 メルカリ上場とグローバルオファリング

メルカリが6月19日、東証マザーズに上場した。今回のIPOによる調達金額は1300億円を上回り、同日終値ベースでメルカリの発行済み株式を時価評価すると、総額が7100億円を超えた。
従来、本邦企業によるIPOでは国内の投資家(のみ)に対して募集・売出しが行われ、国内の証券取引所に上場するのが主流とされてきた(「国内型IPO」)。これに対し、メルカリのIPOでは、国内の投資家のみならず、海外の投資家に対しても募集・売出し等を同時に行った。
本邦企業が大規模な資金調達(又は本邦企業の主要な既存株主が保有株式の大規模な売却)を行う場合に、国内市場と「同時に」主に欧米市場などの海外でも株式の募集・売出し等を行う手法を本邦では「グローバルオファリング」と呼ぶ。近年の例では、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、LINEを挙げることができる。
グローバルオファリングでは、海外の投資家を想定して、日本の証券会社の海外拠点や外国証券会社が株式の引受け、販売を担当する。今回のIPOでは、Daiwa Capital Markets Europe Ltd等5社を共同主幹事会社兼ジョイントブックランナーとする海外引受会社の総額個別買取引受けにより行われた。
【メルカリの国内外募集及び売出しの比率】
        
今回のIPOは、国内募集・売出しに比して海外募集・売出しの方が多い。
本邦企業によるグローバルオファリングにおいて、本邦証券取引所での上場に加え、海外の証券取引所での上場も並行して行う場合(「国内外並行上場」)もある(本邦における上場の前日にNY証券取引所に上場したLINEが一例)。この点、メルカリは、海外の証券取引所での上場は行っていない。

2 グローバルオファリングのメリット・デメリット

国内型IPOと比較して、グローバルオファリングのメリットは3つある。1つは、国内市場のみでのIPOでは難しい資金調達が、海外市場からも可能となること。2つ目は海外の投資家に対してIPO(特に国内外並行上場を伴うもの)を通じて本邦企業の知名度がアップし、その後もグローバルでの債券発行による外貨建て資金の調達など資金調達手法の多様化が図れる点、3つ目は、海外投資家が入ることによる株主構成の多様化が図れる点である。
逆に、国内型IPOでは不要な外国語での資料・書面作成をはじめ、相当額の追加コスト(及び日程がIPO前後に必要となる点、特に国内外並行上場を行った場合、海外上場を維持するための継続的なコストが相当額になる点、海外株主対応・対策が追加的に必要となる点などがデメリットと考えられる。

3 グローバルオファリングで適用のある法規制(例示)

グローバルオファリングの際には、取引の形態に応じて、日本における法令(金商法上の開示規制や外為法上の届出等)に加え、海外市場における法令、開示規制及び慣習等に従ったプラクティスに気を付ける必要がある。
(1) 臨時報告書
金商法24条の5第4項、企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という。)19条2項1号は、有価証券の募集又は売出しのうち、発行価額又は売出し価額の総額が1億円以上であるものが本邦以外の地域において開始された場合には臨時報告書を遅滞なく提出しなければならない旨定める。
この点に関する開示府令については昨年法改正があり、グローバルオファリングを行う場合においては、一定の要件のもとで例外的に臨時報告書の提出が必要なくなった。すなわち、同一の種類の有価証券の募集又は売出しが本邦以外の地域と並行して本邦において開始された場合において、当該海外募集又は売出しに係る臨時報告書で記載すべき内容(開示府令19条2項1号イないしワに掲げられた事項)を有価証券届出書に記載したときは、当該臨時報告書の提出が不要となった。また、同改正によって、これまでは臨時報告書の添付資料として英文目論見書及びその翻訳文の提出が必要とされていたものが、当該有価証券届出書に海外募集又は売出しに係る臨時報告書で記載すべき内容を記載したときは、それらの添付資料が有価証券届出書には不要とされた。
もっとも、改正後も、原則どおりに臨時報告書を提出する企業も多い。メルカリも上記例外規定を用いることなく、国内外での募集・売出しにかかる臨時報告書を提出している。
(2) ルール144A
米国において有価証券の募集を行う場合、原則として米証券取引委員会へ登録が必要となる。今回のメルカリは1933年米国証券法に基づくルール144Aに従った適格機関投資家に対する販売のみを行うとしており、上記登録につき免除規定の適用を受けている。

【メルカリによる国内外募集・売出しの概要図】
   

4 今後も増加が予想されるグローバルオファリング

メルカリの今回のIPOは本邦のユニコーン企業によるグローバルオファリング事例と言われている。今後、IT技術の進化、AIの発達、ファインテックの発展に伴い、日本企業がグローバル市場へ進出する機会も益々広がっていくことが予想され、これに従い、グローバルオファリングの手法による資金調達は今後ますますその活用が広がっていくものと思われる。法規制の点も含め、引き続きその動向を注視したい。
以上

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