プロコメ

2018.8.1

介護業界への異業種参入M&Aについて

2018.8.1

異業種の企業による介護業界への参入

中原 陸
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異業種の企業による介護業界への参入が相次いでいます。

日本の人口減少に伴い、ほとんどの業界において市場縮小が予測されている中、高齢者市場は拡大し続けています。65歳以上の高齢者人口は2040年にピークを迎えるとも言われており、実に今後まだ20年以上も成長し続ける可能性が高い、国内では稀有な成長市場です。そんな老齢者向け産業に、一方で縮小することが見込まれている業界の企業たちが続々と参入しており、その方法としてM&Aを用いられることが多くなってきました。

さて、この記事をご覧になっている方の中には、「いや、介護業界はむしろ今後厳しくなるのでは」とお考えになっている方もいらっしゃると思います。介護事業は介護保険を前提として成り立っており、その介護保険にまつわる法律は3年ごとに改訂されます。その際に国としての方針が明確になる訳ですが、財源に乏しい内情からすると、今後介護保険料は引き締められる傾向に向かうと想定する方が多く、即ち事業者としては利益を出しづらくなる、という考えがあります。私も個人の推測としては同じように考えております。しかしながら、多くの企業がこの業界に今参入するのか。理由は2点あると考えています。

理由①
元々が利益の出すぎる業界であり、それが引き締められたとしても、他業界の企業からすれば十分に利益は出るし、何より成長市場であることが魅力的。

理由②
介護保険料が引き締められることで経営力の乏しい企業が今後市場撤退を迫られると考えられる。一方で老齢者は増えていくため、必ずその受け皿は必要になると考えられ、その受け皿を目指している。

数年前までは、中小企業や脱サラした個人などが小規模デイサービスを開業し、それが一時的には多くの老齢者の受け皿となりました。しかし、経営力に乏しい中小企業を支えるために介護保険料が高止まりし、それが一方で国家の財源を圧迫してきました。社会福祉事業というのは継続的にサービス提供されることが前提である必要があり(老齢者にとって会社がつぶれたから明日から介護を受けられなくなるでは困ってしまう)、そのためには今後より経営力の伴った企業が担っていくべく、制度が改正され、大手企業や異業種企業からの参入が促進され、老齢者の受け皿が中小企業から中堅大企業に移ってきていると考えられます。

異業種からの参入事例として多いのはシナジーが見込まれる産業からの参入で、例えば綜合警備保障が訪問医療マッサージ事業を展開するケアプラスの全株式を取得しました。綜合警備保障は個人客向けのホームセキュリティサービスに力を入れられていて、中でも高齢者向けサービスを重要領域と位置づけ、セキュリティと見守りを絡めた新サービスをこれまでも発表してきています。訪問医療マッサージという事業は、高齢者の個人宅に直接伺って機能改善を提供するサービスであるため、これが同社のサービスとのシナジーが見込まれるとして、買収に踏み切ったとされています。

他には学習塾、不動産会社、調剤薬局、保険会社など、様々な業界からの参入が相次いでおり、今後M&Aが最も活発化する可能性のある業界だと考えております。

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