プロコメ

2018.8.29

大塚家具の業績推移と身売り検討先を考えるまでに至った経緯について

2018.8.29

大塚家具の現況と再生

中島成
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1. (現況)

 株式会社大塚家具(東証ジャスダック上場)は、平成30年8月14日発表の平成30年第2四半期の決算短信において、平成28年12月期から連続して営業損失、営業キャッシュフローのマイナスを計上し、継続企業としての前提に重要な疑義を生じさせる事象(以下「当該事象」)にある、という注記が記された。

 この注記は、当該事象を改善するための対応をしてもなお、企業として継続していけるかどうかが不確実な場合に記載されるもので、単に継続企業の前提に関する重大な疑義があるだけの場合は、注記としてではなく、重要事象として記載される(以下「重要事象」)。2018年3月期決算を発表した上場企業2423社のうち、上記注記が記載された企業は17社、重要事象として記載された企業は36社だった(東京商工リサーチ調べ)。

 大塚家具の直近平成30年1月から6月までの営業損失は約35億円に達し(平成29年1月から6月の営業損失も約27億円)、それまで銀行等からの借入なしに経営してきたと考えられるにもかかわらず、平成30年第2四半期では8億円の短期借り入れが計上された。

2. (支配争奪戦における久美子氏側勝利の背景)

 大塚家具の支配争奪戦を概観すると、
 平成21年3月、大塚久美子氏が大塚家具の社長に就任し、大塚勝久氏(創業者)が会長となる経営体制を取った。
 しかし、平成26年7月、久美子氏は、取締役会決議で社長から解任され、勝久氏が社長に戻った。
 ところが、翌平成27年1月、取締役会決議で久美子氏が社長に復帰し、勝久氏は再び会長職となり、
 同年3月の株主総会における両者の委任状争奪戦(プロキシー・ファイト)の結果、久美子氏側提案の役員体制が株主総会で承認され、久美子氏が社長を続投し、勝久氏が外に出る状況となって現在に至っている。

 この委任状争奪戦では、株主の支持を得るため、平成20年からずっと40円/株だった株主への配当金額を、久美子氏側が80円/株にすると平成27年2月に発表し、勝久氏は、翌3月、これに対抗して120円/株にすると発表した。
 そのような配当ができる背景には、当時存在した潤沢な配当(分配)可能利益がある。大塚家具では貸借対照表上の「その他利益剰余金」額=平成26年12月期で約277億円が配当可能利益に相当する(同時期の現預金は約115億円)。

 しかし、上場企業として多数の利害関係者がいるのに、資産があるからといって事業の好転が見いだせなまま資産をばらまく約束だけをしたのでは、事業を継続できなくなり上場維持もできず、多数の投資家に損害を与えることにつながる。
 したがって、このときは双方とも、自分が経営者になれば、それまでのジリ貧になっていた営業成績=平成24年12月期営業利益約11億8000万円→平成25年12月期営業利益約8億4000万円→平成26年12月期は営業損失約4億円、を挽回できると信じていたのであろう。
 議決権を行使する株主としても、中長期的な観点からは、単に配当をどちらが多く約束したかだけではなく、どちらが経営すればジリ貧の営業成績を改善させることができるかを双方の事業計画の確からしさを評価して判断することになる。
 ただ実際は、仮に勝久氏がそれまでの大塚家具の経営方針を株主総会後も続けたとしても、上記のとおりそれでは既にジリ貧だったのであり、他方、仮に久美子氏側がニトリ等と競争しなければならない業態に転換しようとしたとしても、それが成功するかどうかは不明だから、株主としては、親娘の劇場的な争いを前にして困難な判断状況に置かれていたといえる。

 さて、その困難さと、大塚家具の委任状争奪戦の前年(平成26年)2月に日本版スチュワードシップコード(責任ある投資家の諸原則)が策定され公表されていたこととが、保険会社などの大塚家具の機関投資家の投票行動に影響を与えたと考えられる。
 なぜなら、スチュワードシップコードは、機関投資家に対して、議決権の行使に明確な方針を持つことや(原則5)、議決権の行使を含めて企業価値の向上を促す責任をどう果たしているかを報告すべきこと(原則6)を定めている。したがって、議決権を行使をせずに眺めていること=議決権を放棄することは行いがたい。
 そして機関投資家が議決権行使する場合、その時点の会社側(久美子氏側)に敵対する側(勝久氏側)に投票するのは、それまで当該会社に多額の投資をしてきた自らの立場からは、よほどの合理性を敵対側の事業計画に見いだすことがなければ行いがたい現実があるからである。
 結果、株主総会決議は久美子氏側に軍配を上げた。

3. (大塚家具の再生)

 大塚家具は、久美子氏が社長から解任された平成26年12月期、約4億円の営業損失を計上したものの、久美子氏が取締役会決議で社長に復帰し、株主総会でも支持された平成27年12月期は約4億4000万円の営業利益をあげた。
 しかし、翌平成28年12月期は約46億円の巨額の営業損失、翌平成29年12月期にも同様に約51億円の営業損失を計上した。平成30年8月発表の決算短信でも平成30年12月期も51億円の営業損失を計上する予想となっている。
 久美子氏が社長に復帰した平成27年12月期には約110億円あった現預金は、翌平成28年12月期には約39億円に激減し、翌平成29年12月期には約18億円に激減した。大きな営業損失を計上したため、利益を繰り越すこともできず、利益剰余金も減り続けた。平成30年第2四半期には現金の不足を補うためそれまではなかった短期借り入れ8億円を発生させている。さらに、平成30年1月から6月までの間に、不動産や有価証券を売却し、平成29年12月には約110億円あった固定資産が平成30年6月には約69億円に激減した状況である。。

 大塚家具のこのケースは、金融機関からの債務が過剰でその債務をカットをすれば事業再生の道筋が見えるという過剰債務ケースとは異なる。大塚家具には殆ど金融負債がないのである。再生するために債務免除を受けることは不要で、また、単に資本を第三者から入れてもらうだけでも資金の流出が続くだけだから再生にはならない。

 大塚家具が再生するには、今からごく短期間で営業利益を出せるビジネスモデルに行き着くしかないと考えられる。
 その行き着き方は、そのようなビジネスモデルを構築できる企業(以下「当該企業」)への事業譲渡や、当該企業による資本注入等によって、ビジネスモデルの大転換をすることであろう。単に責任論からだけでなく、ビジネスモデルの大転換が必要という理由で現経営者の交代が視野に入ると思われる。

 当該企業が支配を確立するため大塚家具が100%減資をする。そのため民事再生手続等を利用し、株主総会決議を経ずに裁判所の許可、や再生計画認可によって減資を行う手段もある。しかし、大塚家具の場合、平成30年6月の段階で未だ債務超過に陥ってはいないので、100%減資のために民事再生手続等を利用することは難しい。上場廃止を決断できるかという点もある。金融負債が殆どないので銀行が強力なリーダーシップを取ることも難しい。

 結局、久美子氏自身が、任意の交渉によって、ビジネスモデルを転換させてくれる、株主が納得できるスポンサーを、今からごく短期間の内に見つけなければならないだろう。それができなければ、経費削減や資産の切り売りにも遅からず限界が現れ、資金不足に陥り支払い不能となって、再生を遂げられない可能性があると考えられる。
以 上

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