プロコメ

2018.9.26

楽天のみんなのビットコイン買収について

2018.9.27

楽天の仮想通貨交換業への参入、その未来

増谷 嘉晃
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1.はじめに

2018年8月31日、楽天株式会社(以下、「楽天」という。)は、仮想通貨交換業を営むみんなのビットコイン株式会社(以下、「みんなのビットコイン」という。)の全株式を連結子会社である楽天カード株式会社(以下、「楽天カード」という。)を通じて取得すると発表した。同日締結された楽天カードとみんなのビットコインの親会社であるトレイダーズインベストメント株式会社との間の株式譲渡契約に基づくとのことである(なお、譲渡実行予定日は10月1日)。

2.株式取得の理由

楽天の発表によれば、みんなのビットコインの株式取得の理由は、要するに、次の2点である。この2点の理由から、仮想通貨交換サービスを提供しているみんなのビットコインを楽天グループに取り入れ、シナジーを得ようという狙いである。
1点目の理由は、楽天グループは、FinTech(金融)サービスにおいて、すでに70を超えるサービスを提供し、独自の「楽天エコシステム(経済圏)」を拡大させているところ、将来的にはEコマースや実店舗での決済、P to Pでの決済手段として、仮想通貨による決済機能の役割が大きくなっていくと見込んでおり、仮想通貨交換所機能の提供が必要であると考えていることである。
2点目の理由は、楽天グループである楽天証券において、仮想通貨による運用機会の提供を期待する客の声が大きくなっていることである。
 ところで、筆者は、仮想通貨それ自体よりも、仮想通貨を支える中核技術であるブロックチェーン技術こそがイノベーションであって、将来の発展可能性も高いと考えるものであるが、ブロックチェーン技術の獲得が狙いとは理由には挙げられていない。

3.仮想通貨交換業とは?

 資金決済法2条7項によれば、仮想通貨交換業とは、①仮想通貨の売買または他の仮想通貨との交換、②①に掲げる行為の媒介、取次ぎ、または代理、③②その行う①②に掲げる行為に関して、利用者の金銭または仮想通貨の管理をすることのいずれかを業として行うことをいう。
2017年4月1日から施行された改正資金決済法により、国内で仮想通貨と法定通貨との交換サービスを行うには、仮想通貨交換業の登録が必要になった。
登録された仮想通貨交換業者には、行為規制として、情報の安全管理義務、委託先に対する指導監督義務、利用者の保護などに関する措置義務、利用者財産の管理義務、金融ADRへの対応義務などが課される(資金決済法63条の8~12)。また、マネーロンダリング規制の適用を受けるため、顧客の取引時確認、確認記録・取引記録の作成、疑わしい取引の届け出、社内体制の整備などの義務が課される。
 2018年9月23日現在、仮想通貨交換業者として登録されている業者は、株式会社マネーパートナーズ、SBIバーチャル・カレンシーズ株式会社、GMOコイン株式会社など、16の業者である。

4.みんなのビットコインは審査中~コーポレートガバナンスの整備等が課題~

みんなのビットコインは、登録審査中であり、まだ仮想通貨交換業者として登録されていない(ただし、みなし仮想通貨交換業者として営業は可能である)。
 仮想通貨交換業といえば、MTGOXのビットコイン消失事件や、コインチェックの約580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」の流出事件が記憶に新しい。もちろん、業者は玉石混交であろうが、管理が杜撰な印象はぬぐえない(そうであるから、登録が必要になった)。
現に、金融庁が発表した仮想通貨交換業者等の検査・モニタリング結果によれば、仮想通貨交換業者に対して、かなり厳しい指摘がなされている。たとえば、コーポレートガバナンスに関して、利益を優先した経営姿勢であること、利用者保護の意識の順法精神が低いこと、経営情報や財務情報の開示に消極的であること、リスク管理・コンプライアンス部門に関して、法令等のミニマムスタンダードにも達していない内部管理であること、内部監査に関して、そもそも内部監査が実施されていないこと、などという指摘がなされている。
みんなのビットコインに対しても、2018年4月25日、関東財務局より、経営管理態勢の構築、マネーロンダリング及びテロ資金供与に係る管理態勢の構築、帳簿書類の管理態勢の構築、利用者保護措置に係る管理態勢の構築、システムリスク管理態勢及び外部委託先管理態勢の構築の改善を求める業務改善命令が発出されている。
楽天グループの力を借りれば、指摘された業務の改善に対応し、仮想通貨交換業者として登録に漕ぎ着けることは難しいことではないかもしれない。それは前提として、その先、みんなのビットコインに対する利用者の信頼を獲得していくことが、シナジーを得るために重要なことはいうまでもない。

5.仮想通貨交換業界の再編のスピード

 仮想通貨交換業界の再編のスピードには目を見張るものがある。現に2018年9月20日(執筆時点では数日前の出来事)、仮想通貨取引所Zaifがハッキング被害に遭い、約67億円相当の仮想通貨が流出したと発表した。そして、同日、金融情報サービス業者である株式会社フィスコ(東証ジャスダックに上場)が、持分法適用関連会社である株式会社フィスコデジタルアセットグループの子会社を通じた、①金融支援の金額 50 億円、②最終的な株式シェア過半数以上、③過半数以上の取締役の派遣および監査役1名の派遣について、正式合意を目指す検討を開始する基本合意の締結をしたと発表した。
まだ、「正式合意を目指す検討を開始する基本合意の締結」のフェーズであるため、どのような買収スキームになるのか等の詳細は明らかではなく、行われているであろうフィスコによるデューデリジェンスの結果次第であろうが、業界再編のスピード感は相当なものである。

6.最後に

 楽天によるみんなのビットコイン買収、前述のフィスコによるZaifの買収に先立ち、マネックスグループが流出事件を起こしたコインチェックを買収している。今後も同様に、大手企業が仮想通貨交換業者を買収し仮想通貨業界に参入する可能性はある。
しかし、仮想通貨の時価総額は、株式等に比較すると遥かに小さい。その一方で、新規参入予定業者は、後を絶たないという声も聴く。そうであれば、(一通りの業界再編を経て)仮想通貨交換業者の淘汰が進む可能性は高いと考えられる。
果たして、生き残るのはどこなのか、どのような戦略が功を奏するのか、大いに注目したい。

以上

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