プロコメ

2018.10.10

地銀の再編について

2018.10.10

金融再編

平川智章
平川智章 M&Aアドバイザー プロフィールを見る

金融業界再編の歴史

銀行業界といえば、もっともM&A(合併と買収)が盛んに行われている業界の一つです。統計データを見ると、銀行、信金、信組などを合わせた合計数は、現在500強となっています。一方で平成8年のデータでは約1000となっています。約20年で半数近くになっており、どれだけのペースでM&Aが行われてきたか伺い知ることができます。業態別で平成8年と平成29年の数を比較すると、地方銀行が129から105、信用金庫が410から261、信用組合が524から148と信用組合の減少が顕著です。今日はこの銀行業界のM&Aについて、特に再編が進む地方銀行、信用金庫、信用組合を中心に考えていきたいと思います。

再編が起きるのには背景がある

大きく再編が進んでいる銀行業界ですが、再編には必ず背景があります。先程平成8年には1000程だったと記載しましたが、平成8年から一気に銀行数が減少しています。何があったのか。それは金融ビッグバンです。経済が成熟、バブルが崩壊し、空洞化しつつあった金融市場に対して、護送船団方式を始めとしてがんじがらめに縛った規制をフリーでフェアでグローバルな金融市場にしようという動きが高まり、それが銀行再編のキッカケになりました。

現在の金融業界は

現在の金融業界も再編の動きが高まっています。何故か。2016年に日銀の黒田総裁が発表したマイナス金利が大きく影響しています。金利が低すぎて利ざやが取れず、預金者からお金を集めて貸し出すという本来の銀行業務で利益が取れなくなっています。実際、金融庁が発表した地方銀行、第二地方銀行に埼玉りそなを加えた106行の2018年3月期の決算では、5年振りに純利益が1兆円を割り込んでいます。特に本業の利益減が大きく、5.1%減、5年連続の収益減となっています。貸出金残高自体は増加している中での結果であり、利ざやがとれず、動いても儲かりづらい構造であることが浮き彫りになっています。

スルガ銀行の問題は「対岸の火事」ではない

上記のように本業が儲からない中、各銀行、特に地方銀行は収益確保をどうするか、躍起になっています。例えば、個人向けのカードローン、アパートローンなどの不動産融資、高リスクの有価証券など、稼げる分野に力を入れています。スルガ銀行の一般サラリーマンを中心としたシェアハウス融資が問題になっていますが、背景にはこのような状況があります。「投資案件として回収できないと分かっていながら積極的に融資したのではないか」と言われていますが、銀行の立場を突き詰めれば「貸したお金が返ってくれば良い」という見方もできます。つまり、投資案件として回収できず、顧客が損害を被ったとしても、サラリーマンとして粛々と働いて最終的に貸したお金を返してくれればよい、本業の利益が圧縮される中、稼げる商品を積極的に販売してきたという見方もできます。倫理的にどうかということがあるとはいえ、他の銀行も完全に他人事とは言い切れないのではないでしょうか。
(スルガ銀行については、現在調査中ですので、その前提で銀行の立場の一般論を記載しています)

最終的にどこまで再編されるのか

では、銀行業界はどのように再編されていくのでしょうか。これは金融庁が明確に発表しています。その内容は
・和歌山、富山、島根など23県で地域銀行がなくなる
・京都、愛媛、熊本など13都道府県では1行のみ存続
・神奈川、愛知、大阪など10府県では2行存続
というものです。およそ30行まで地域銀行は集約されていく計算になります。目先では稼げる商品を販売するということがありますが、一方で統合によって効率化し、コストを削減することも生き残りの道として長期的に考えていかなくてはなりません。そう考えると銀行業界の再編はまだまだ続きそうです。銀行業界のM&Aに今後も注目です。

最新のプロコメテーマ