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2018.10.24

サイバーエージェントの「FC町田ゼルビア」運営のゼルビア買収について

2018.10.24

「サイバーエージェントによるFC 町田ゼルビアの買収にみるネット企業とスポーツ振興の融合」

鼎博之
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FC 町田ゼルビアの発祥と発展の条件

10月1日、サイバーエージェントによるFC 町田ゼルビアの買収が公表された。東京都町田市は、静岡県清水市と並んで少年サッカーが盛んな地域であり、FC 町田ゼルビアは、1977年の少年サッカーチーム結成が発祥とされる。地域に根ざしたチームとして、ジュニア、ジュニアユース、ユースが結成され、1989年トップチームが結成された。東京都社会人サッカーリーグ、2009年日本フットボールリーグを経て、2012年シーズンにJ2に参入した。
ホームグランドは町田市営陸上競技場で、特定の企業が主体のチームでなく、地域運営のチームであるため、町田地域を始めとする多くの企業や個人のスポンサーの支援を受けてきた。今後、J1参入を狙うためには、1万5千人収容の天然芝ピッチを備えたスタジアムや屋内トレーニング施設、隣接するクラブハウスなどのインフラ整備等J1ライセンスの基準を満たす必要がある。
サッカーチームの運営が順調になされるためには、有力な選手の獲得・選手の福利厚生、練習施設の確保、健全な財務体制などの条件が揃わなければならない。そのためには、多額の資金が必要であり、有力な企業スポンサーの存在はその一つの条件となる。今季、ヴィッセル神戸が年俸32億円3年契約でFCバルセロナのスター選手であり、スペインのワールドカップ代表選手イニエスタを獲得したのもクラブチームの運営には有力な選手の獲得ないし育成が欠かせない条件となっているためである。特に、町田ゼルビアの場合は、今季もJ2で上位の成績を維持しているが、悲願のJ1昇格の目標を達成するためには、昇格の条件となるホームグランドの整備と財務体質の強化が必須要素であるため、サイバーエージェントのような有力スポンサーが親会社となることによるメリットは計り知れない。

今回の買収の詳細

サイバーエージェントのIR情報によると、今回の買収は、「21世紀を代表する会社を創る」をビジョンに、人材を会社の競争力ととらえ、人材の採用・育成・活性化に力を入れることで、インターネットの領域で常に新規事業を生み出し、先行投資を行いながら継続的に拡大する自前成長を特徴としている会社として、FC町田ゼルビアとは親和性が強いこと、同社のインターネットサービスを通じて、サポーターへの情報提供やサービスの充実、新たなサポーターの獲得を図ることが述べられている。

今回買収する事業の内容を見てみよう。
Jリーグの開示資料 によれば、FC 町田ゼルビアの2018年1月期の決算としては、営業収入709百万円(J2平均1,413百万円)、営業費用678百万円(J2平均1,372百万円)、営業利益31百万円(J2平均41百万円)となっており、売上規模、営業費用ともJ2平均を下回っている。
過去3年間の営業結果の推移は次の通りである。(単位百万円)
 2016年1月期 売上高442 営業利益▲5 経常利益 1
 2017年1月期 売上高626 営業利益▲1 経常利益▲3
 2018年1月期 売上高709 営業利益31 経常利益29

また、2018年1月期で241百万円の累積損失を計上していることから、毎年の経常利益の中から、インフラ整備費用を賄うことは極めて困難であり、有力な企業スポンサーの出現はクラブにとっては、願ったり叶ったりの出来事と思われる。

今回の第三者割当増資は、M&Aの最適の手法である

M&Aの手法としては、株主からの過半数以上の株式の取得、合併、事業譲渡などの手法があるが、第三者割り当て増資は、株式の発行会社自身に株式の割当金が振り込まれることから、会社の財務体質そのものを強化するのに適した方法である。FC 町田ゼルビアの場合、代表取締役会長の下川浩之氏は、会社の総発行株式の2.1%を保有するほか、下川氏と同じく2.1%の株式を保有する3名の所有株式数を合算しても8.4%に過ぎず、他には172名の少数株主が存在するだけである。したがって、多くの株主からの持株を買い取ることよりも、第三者割り当てによる新株発行による増資は、株式発行による割当金が直接会社の資本金に計上され、財務体質の強化に役立つこととなる。今回の増資により、サイバーエージェントは、発行済み株式総数の80%を所有する株主となり、クラブには11.48億円の資金が振り込まれる。資本金167百万円のFC 町田ゼルビアにとって、増資資金11.48億円は、貴重な財源となる。この資金は、直ちにクラブの施設インフラ整備の資金に充当することが可能となる

クラブもスポンサーもWin-Winの関係に

今日、プロスポーツ振興にとって施設整備と選手の福利厚生の充実は、必須の条件となっている。そのためには、資金の確保をいかに達成するかが重要な鍵となる。一方、Jリーグの人気は益々隆盛を見つつあり、その観客数の増加のためには実際にサッカー場に足を運ぶ観客と試合をネットで観覧する観客の増加も重要な要素である。近時、スマートフォンやタブレットにより、いつでもどこでもスポーツ観戦を楽しみことができる環境が整ってきている。インターネットサービスを通じて様々な新事業を展開してきたサイバーエージェントの参入により、FC 町田ゼルビアが今後いかなる発展を遂げるかを多いに期待したい。 (了)
https://www.jleague.jp/docs/aboutj/club-h29kaiji.pdf

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