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2019.1.30

武田のシャイヤー買収について

2019.1.31

武田薬品によるShire plcの買収

増谷 嘉晃
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1  はじめに

武田薬品工業株式会社(以下「武田」といいます。)が、Shire plc(以下「Shire社」といいます。)を買収(以下「本件買収」といいます。)しました。
武田の2019年1月8日付のリリースによれば、武田によるShire社の買収を実行するためのスキーム・オブ・アレンジメントの手続(以下、「本件スキーム」といいます。)について、2019年1月8日(以下、「本件効力発生日」)付で本件スキームの効力が発生し、武田はShire社の全株式を取得し、Shire社は武田の完全子会社となったとのことです。
また、本件スキームの効力発生に伴い、本件効力発生日付で、2019年1月7日付「募集株式の募集事項に関するお知らせ」にて公表した募集事項のとおり、本件当社新株式が発行されたとのことです。

2 スキーム・オブ・アレンジメントとは

さて、本件では、スキーム・オブ・アレンジメントというあまり聞きなれない手続が利用されていますが、一体どのような手続きなのでしょうか。
スキーム・オブ・アレンジメントとは、英国法上の制度であり、買収手続を株主等の当事者の個別の合意ではなく、株主集会の承認及び裁判所の認可手続により一律に変更することにより行うものです。
本件では、対象会社であるShire社の設立準拠法であるイギリス王室属領ジャージー会社法に基づきスキーム・オブ・アレンジメントの手続が行われています。
日本の会社法上、対象会社を完全子会社化するために利用される制度として、既存の会社に対し対象会社の株主が有する全株式が移転して既存の会社が完全親会社となる株式交換という制度があります(会社法767条、769条1項)。
対象会社を完全子会社化するという側面を見ればスキーム・オブ・アレンジメントは、日本法上の株式交換と類似の制度であるといえるかもしれません。
日本の会社法の株式交換を行うための手続についてですが、効果の点からは、完全子会社となる会社の株主が保有する株式を完全親会社となる会社に対して現物出資して募集株式の発行等を受けたのと同じですが、現物出資に似た手続(現物出資的構成)ではなく、ほぼ合併の手続(組織法的な行為としての構成)と同様の手続が採用されています。
本件の武田サイドの手続は、臨時株主総会の第1号議案が、Shire社の普通株式の拠出と引換にする武田の新株式の募集事項の決定を武田取締役会に委任する件(会社法199条及び200条1項)であることからすると、現物出資的構成として整理されているように思われます。

3 スキームの内容

武田の臨時株主総会の招集通知によれば、本件効力発生日において、武田は本件スキーム基準時で発行済みのShire社普通株式の全てを取得し、その対価として、Shire社株式を保有する株主に対し、Shire社株式1株当たり、現金30.33米ドル及び普通株式0.839株又は武田の米国預託証券(ADS)1.678株のいずれかを交付するとされます。なお、武田は、本件買収の完了と同時か直後に、ADSをNYSE/ニューヨーク証券取引所へ上場する予定とのことです。
本件の買収には、約11%の株主が反対の議決権を行使していますが、反対の理由にこの交換比率が不公平であるという理由も挙げられていました。
ここで、一般論として、合併条件に納得しない株主の救済として、合併条件の不公正が合併無効事由となるかという議論があります。
この点については、合併条件の不公正それ自体は、反対株主の株式買取請求権による救済を求めることができるため、合併の無効事由とはならないと整理されています。
しかし、本件のように現物出資的構成により、実質的に組織再編を実現する場合は株式買取請求権が認められていないため、同様の議論ができるかという点は気になる点です。
 

4 最後に

今回の買収額は、日本企業による海外M&Aとして、過去最高額であるとのことです。買収額が高額にすぎるという意見もありますが、本件買収が結果的に妥当であったといえるのかどうかは、今後の武田の業績次第ではないかと思います。今後の飛躍に期待を持ちながら、注目していきたいと思っています。

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