プロコメ

2019.2.13

介護業界の再編について

2019.2.13

介護業界におけるM&Aによる規模の拡大は成功しているか?‐SOMPOのケースより

川井隆史
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介護業界の概観

厚生労働省の発表によれば平成31年10月現在で要介護(要支援)認定者は655万人に達しました。GD Freakの推計によれば2040年の要介護(要支援)認定者は940万人に達する予定です。介護業界はこのデータにあるように日本でも成長が期待されますが、全世界的高齢化により成長が期待される分野でもあります。しかし、一方で2つの大きな問題があると考えられます
1つ目は人材確保の難しさです。厚生労働省の資料によれば28年で全産業の有効求人倍率が1.36倍に対し、介護分野は3.02倍と非常に高くなっています。一方離職率は16.5%と高く、また退職理由としても心身等の不調が27.1%と一番の理由とされる一方、23.6%が低収入をあげ、厳しい労働条件がうかがわれます。介護労働安定センターのアンケート調査(2015年8月)によれば66%の介護施設で人手不足という結果が出ています。
 2つ目は介護報酬の改定で厳しい財政状況にあるとはいえ、かなり場当たり的とみられるような介護報酬の改定が行われてきた経緯があります。特に平成15年度と17年度に行われたそれぞれ2.3%と1.9%のマイナス改定は業界にショックを与えました。再び27年度においても2.27%のマイナス改定が行われています。
こういった人手不足と介護報酬の改定によって左右されやすい体質もあいまって中小事業所の淘汰が始まっており、そういった意味でも大手による介護業界のM&Aは今後も活発化すると考えられます。

SOMPOホールディングスのM&A

その中で異業種からの介護事業進出で一気に業界2位に躍り出たSOMPOホールディングス(旧損保ジャパン日本興和ホールディングス、SOMPOと記載)はM&Aを駆使して異業種から参入しており特筆すべきものがあります。大まかな経緯としては2015年12月にワタミの介護子会社を買収し、SOMPOケアネクストとして連結子会社化、そして続いて2016年3月に㈱メッセージの株式を取得しSOMPOケアメッセージとして連結子会社化しています。そして、2018年3月にはSOMPOケア㈱としてすべての介護事業会社を経営統合しています。
ワタミの買収については210億+ワタミへの借入引き受け50億で合計260億の買収、買収した事業は純資産11億、売上350億で赤字、かなり高値掴みではないかと言われました。㈱メッセージにしても最終的には600億近い買収となり国内買収で43億の純利益の企業なので純利益に対して10倍以上の買収価額で、国内企業の買収としては高いのではないかと言われました。

加えてワタミの介護については入居者の相次ぐ死亡事故や過重労働問題でブラック企業として社会的に糾弾、㈱メッセージも職員による相次ぐ入居者に対する虐待や殺人まで起こりかなり組織としては問題が生じていたところでした。そういった意味では案件としては潜在的なリスクもあったといえ、思い切った買収とみることができました。
あくまでも想像ですが、SOMPOとしては自社の強いコンプライアンスの仕組みや組織力で組織を再生できるとにらんでの買収と言えるかと思います。

SOMPOのM&Aにみる異業種からの介護業界への参入は成功だったか?

 SOMPOの動きを見ていると買収後、大きな研修センターを開設して研修の仕組みを作り上げるとともに、見守りシステムを導入するなど積極的なICT投資を行っているようです。そして前述したように2018年に経営統合し、シムテム統合や人事処遇の一体化などのインフラ整備に本格的にかかるものとみられます。
ただし、買収後の推移をみると買収約1年後の2017年3月期が1165億の売上で68億の介護セグメント赤字、2018年3月期が1250億で15億の赤字と単なる経営成績的には売上はある程度伸びている反面、利益は稼ぎ出していません。短期的な財務数値的には成功とは言い難いところはあると思われます。
経営統合にしても2年以上経過してからということでスピード感が乏しいといえるかもしれません。しかし、特に施設型介護の特徴としてその拠点単位の独自性が強くなりがちで標準化の抵抗が強いという面があります。そのあたり、今回の経営統合でどの程度一定の品質を保ったうえでの標準化、効率化ができるかが今後のSOMPOだけでなく、特に介護事業のM&Aの大規模化を占ううえでも重要な案件であるといえるかと思われます。

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