プロコメ

2020.2.12

ヤマダ電機による経営再建中の大塚家具の買収について

2020.2.12

不振の2社のM&Aの真の狙い(ヤマダ電機による大塚家具の子会社化)

川井隆史
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1.ヤマダ電機との資本業務提携の概要

大塚家具㈱は2019年12月12日に㈱ヤマダ電機との資本提携および新株予約権の発行について開示しました。まず株式を3000万株発行して43億7400万を調達するとともに
9百万株(行使により21億8700万)の新株予約権をヤマダ電機に割り当てました。
これによりヤマダ電機は議決権ベースで51.74%の株式をにぎることになります(新株予約権を行使した場合58.23%)。

 大塚家具は2019年2月15日に㈱ハイランズから38億3千万を調達する予定でしたが
26億28百万のみ調達という事態となり、かつともに発行した新株予約権についても株価が行使価格を大幅に下回っているため行使の目処が立っていませんでした。

 大塚家具の発表では物流や広告費などに充当するといった資金使途が書かれていますが
基本的には倒産の危機にあった大塚家具をヤマダ電機が救済したというところでしょう。
重要な会議ではヤマダ電機側からオブザーバーが出席すると開示資料には書かれており
取締役の派遣などは当面行われませんが、実質的にはある程度意思決定をコントロールしていくことになりそうです

2.不振にあえぐ両社

 大塚家具については新聞等をにぎわせました。2009年に大塚久美子氏が社長に就任、しかし、2014年7月にいったん創業者の父大塚勝久氏により解任、しかし、2015年1月に再び取締役会で返り咲き、株主総会などで勝久との委任状争奪合戦が繰り広げられたのは記憶に新しいかもしれません。

その後は2016年12月期から44億、51億、53億と3期連続の大幅経常赤字、今期もほぼ回復は絶望な状況です。無借金経営で2015年12月には109億あった現金預金もみるみる減少し、2017年12月期には18億まで減少しました。赤字による現金流出を何とか支えていたのが手持ちの有価証券の売却で、昔の財産を吐き出して何とかやりくりしていたというのが実情でしょう。

在庫回転日数を同業他社とくらべてみます。大塚家具(2018年12月)は160日とニトリ(2019年2月)の78日の2倍以上です。多少ニトリが汎用品、大塚家具は中高級品と違いはありますが、同業他社とここまで財務指標が異なると大塚家具の過剰在庫・不良在庫が疑われます。

     

  以上よりかなり大塚家具は危機的な状況にあったといってもおかしくないでしょう。

一方のヤマダ電機も現在決して元気な状況ではありません。そもそも、同業のヨドバシカメラやビックカメラなどとは異なり、郊外型店舗が中心であることから人口減少の影響を受けやすく、販売が伸び悩んでいました。この傾向は長期なトレンドと考えられ、抜本的な戦略転換が求められていたといえるでしょう。

経営成績的にも2017年3月期から3期連続経常減益で660億だった経常利益も369億と半分強まで落ちこみました。

ヤマダ電機の打開戦略としては住まいに関するあらゆる商品サービスを一括して提供しようということで、2011年に中高級住宅メーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダホームズ)2012年に住設機器メーカーのハウステックを買収「住宅まるごと提案」の拡充を目指しています。こういった住環境がすべてそろう「家電住まいる館」という新業態の店舗を展開中です。しかし、このエス・バイ・エルも2017年2月期、2018年2月期と連続して経常赤字で業績も冴えません。ヤマダ電機も大塚家具ほどではないですが業績悪化に苦しんでいました。こういった両者ともに苦境にある中でのM&Aだったわけです。

3.今後の狙いと懸念点

考えられる狙いとしては家電・住宅・住宅設備・家具などをワンストップで提供し、将来のスマートホームなどで先陣をきると考えられ、その一貫としての大塚家具の子会社化があると思われます

ただ、大塚家具の発表をみるとかなり独立性が強調されており、大塚久美子社長の経営責任も表立っては追及されていないようです。こういった中で大塚家具がヤマダ電機の戦略の中できちんと役割を果たしてくれるかはやや懸念があります。日本の会社にありがちな久美子社長を代表権のない会長などに祭り上げるようなことが次回の株主総会前に起こることは考えられますが。

一方、ヤマダ電機の「家電住まいる館」のキャッチコピーは「家電製品はもちろん、新築受託・住まいのリフォームインテリア・かぐなどどこよりもお安くお得に」と基本的には今までの「安売り家電」のイメージを色濃く出しています

このような文化で「大塚家具」がフィットするのかはエス・バイ・エルと同様疑問が残るところです。このあたりどのように両社のシナジーを出していくかでこのM&Aの成功不成功は見えてくるのではないかと思われます

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