「IT・ソフトウェア業界のM&Aについて」

2018年2月15日

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現在、最もM&Aが活発な業界の一つと言われているのが、ITソフトウェア業界です。2006年には年間約400件行われていたM&Aが、2008年のリーマンショックにより、ITソフトウェア業界のM&Aも停滞し、2010年には約200件まで減少しました。

その後、マイナンバー導入のためのシステム開発や金融機関の大型システム開発による特需により、ITソフトウェア業界の売上高は堅調に回復。2017年の市場規模や約12兆円と、2013年からの5年間で1.3倍まで成長しております。

このような状況で、業界各社は積極的にM&Aを行っており、2016年には600件強と、2010年の3倍にも及ぶM&Aが行われました。

 

では、この一年間、ソフトウェア業界ではどのような企業がどれくらいの規模感でM&Aをしてきたか、一例を見ていきたいと思います。

 

 

上記事例から、それぞれの買収価格を見てみると、他の業種より比較的高い金額で取引されていることがわかります。

 

中小企業のM&Aにおける企業評価では一般的に用いられる評価方法として「時価純資産+営業権」という考え方があります。この「営業権」は減価償却前営業利益×〇倍で考え、〇倍の部分は業界や市況、企業毎に変わります。

例えば、外食業界や介護業界などは3~5倍といわれております。

 

2017年5月

売手企業 買手企業
企業名 株式会社ミックステクノロジーズ 株式会社sMedio
事業内容 ソフトウェア開発 ソフトウェア開発
資本金 10百万円 503,402千円
純資産 25百万円 1,294百万円
売上高 52百万円 1,056百万円
営業利益 4百万円
取得金額 41,766千円

 

売手企業 買手企業
企業名 株式会社筆まめ ソースネクスト株式会社
事業内容 ソフトフェア企画開発 ソフトウェアおよびハードウェアの開発・販売
資本金 100百万円 1,771百万円
純資産 321百万円
売上高 1,039百万円 9,340百万円
営業利益 52百万円 1,573百万円
取得金額 7億99百万円

 

2017年11月

売手企業 買手企業
企業名 株式会社電縁 株式会社クラウドワークス
事業内容 WEBシステム開発 クラウドソーシング事業
資本金 3,500百万 17億6,495万円
純資産 246百万円
売上高 2,323百万円
営業利益 82百万円
取得金額 643百万円

 

 

2018年1月

売手企業 買手企業
企業名 株式会社ヴィオ SAMURAI&J PARTNERS株式会社
事業内容 システム受託開発 情報サービス事業、金融取引事業
資本金 11,000千円 987,425千円
純資産 70,862千円
売上高 136,750千円
営業利益 10,819千円
取得金額 130百万円

 

売手企業 買手企業
企業名 株式会社無限 株式会社ユニリタ
事業内容 パッケージソフト開発・販売 パッケージソフト開発・販売
資本金 3,040万円 13億3,000万円
純資産 270,713千円
売上高 2,174,843千円 69億41百万円
営業利益 72,636千円
取得金額 約6億円

 

売手企業 買手企業
企業名 株式会社プロビズモ テクノプロ・ホールディングス株式会社
事業内容 アプリケーション開発 技術系人材サービス
資本金 6億2千万円
純資産 641百万円
売上高 1,272百万円 1000億円
営業利益 126百万円 9,647百万円
取得金額 約1,755百万円

 

上記事例の開示情報では、時価純資産や減価償却前営業利益まで読み取れないため、純資産と営業利益で計算をしてみると、

 

ミックステクノロジーズ社:約4倍

筆まめ社:約9倍

電縁社:約5倍

ヴィオ社:約5倍

無限社:約5倍

プロビズモ社:約9倍

 

平均:約6.2倍

 

上記の通り、他業界より比較的高い倍率となっております。この背景には、人材不足と技術革新があると考えられます。

 

自社にない技術やノウハウの確保と人材不足の解決という2点があると思われます。

 

2017年のIT人材白書によると、9割弱の企業で人材が不足しているという回答が出ております。同様に、フォーバル社が昨年実施した「IT・ソフトウェア業界動向調査レポート」でも、約7割の企業がエンジニアの採用に苦戦しているという結果が出ております。

 

また、同調査レポートでは、「生き残っていくために重要なポイント」として“ビジネスモデルの転換”という回答が最多となりました。技術革新により、受託開発型から運用型やクラウド型へビジネスモデルの転換が進んでいることや、AI・VRなどの技術進歩が背景にあると考えられます。

 

上記の2点から、多少高値でも、市場が堅調なこのタイミングで、「優秀なエンジニアの確保」と「自社にない技術やノウハウの取得」を行おうという企業が増えていると考えられます。

IT専門調査会社のIDC Japanによると、国内のITサービス市場は2021年まで年平均1.1%成長していくとみられており、M&Aの件数も今後も増えていくのではなかと思われます。

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