» RIZAPグループの「堀田丸正」子会社化について

テーマRIZAPグループ ヤマノグループから『堀田丸正』を子会社化

RIZAPグループ(アンビシャス、2928)は、和装品などを手掛ける堀田丸正(東証2部、8105)と資本業務提携すると平成29年5月23日に発表した。アパレル企業へのM&Aはジーンズメイト(7448)など上場・非上場を合わせて7社目。

堀田丸正の第三者割当増資の引き受けにより、RIZAPによる払込金額は、総額19億2500万円。増資後の保有株比率は議決権ベースで62.27%となる。

 

「RIZAPグループの「堀田丸正」子会社化について」

2017年7月11日
坂元 英峰

弁護士

平成8年京都大学法学部卒、平成10年京都大学大学院法学研究科卒。
平成12年4月弁護士登録。平成17年6月税理士登録。日系企業のアジア進出支援に定評のある弁護士法人マーキュリー・ジェネラルの代表パートナー。
国内外の企業法務、M&A、事業再生等に豊富な経験を有し、社外役員を務める会社も多数あり、各分野に関する講演歴等も多数にのぼる。  

1 はじめに

RIZAPグループ株式会社(RIZAP)は、旧中期経営計画「中期ビジョン2018」を前倒し達成したことにより、平成27年2月に「COMMIT 2020」というRIZAPらしいタイトルの新中期経営計画を発表した。COMMIT 2020では、RIZAPが自己投資産業グローバルNo.1ブランドになり、売上高3000億円、営業利益350億円(いずれも連結)を計上することが目標として掲げられている。

この大目標達成に向け、RIZAPは、近年のコア事業であるパーソナル・トレーニングジム事業が好調を維持しているほか、上場・非上場を問わず、積極的なM&A(買収)戦略による拡大路線を加速させており、市場においても注目の的となっている。そのM&A戦略の一環として、平成29年5月23日、RIZAPは堀田丸正株式会社(堀田丸正)との戦略的事業資本提携の契約と、堀田丸正の第三者割当増資の引受けによる子会社化等を発表し、過日(平成29年6月28日)にかかる増資引受けの完了(子会社化)を発表した。そこで、本稿では、このRIZAPによる堀田丸正の子会社化(資本業務提携)のねらい等について、筆者の見解を述べてみたい。


2 RIZAPの強み~M&Aによるアパレル事業の強化

RIZAPは元々「健康コーポレーション株式会社」として知られ、健康食品や化粧品等の販売事業をコアビジネスとして、平成18年5月に札幌証券取引所アンビシャスに上場したが、インパクトのあるTVコマーシャルでもお馴染みのパーソナル・トレーニングジム「RIZAP」事業等で近年急成長し、平成28年7月のRIZAPの純粋持株会社化によって、現在のRIZAPグループ体制に至っている。

そして、RIZAPは、RIZAPが適時開示資料等において繰り返し強調している「RIZAPの爆発的成長を支えてきた独自のマーケティング力」こそが、RIZAPの強みであると考えており、これを核とした多岐にわたるM&A戦略が展開され、現在はマルコ、イデアインターナショナル、夢展望等を通じたアパレル関連事業への進出も積極的に進めており、各社の急速な黒字化等による経営再建にも成功している模様であり、注目を集めている。


3 堀田丸正の子会社化による「RIZAPアパレル事業グループ」の強化

RIZAPは、平成29年5月23日付け適時開示資料「堀田丸正株式会社との戦略的事業資本提携方針のお知らせ」において、以下のとおり宣言している。

『●当社グループは、素材メーカーとしての強みを持ち、海外生産・販売実績を持つ堀田丸正を、「RIZAPアパレル事業グループ」の中核企業として迎え、川上である素材開発から企画・生産、川下である販売に至るまでのプロセスを一貫して行うSPA(製造小売業)としてのビジネスモデルの強化を推進してまいります。本提携を通じて、お客様のニーズに機敏に対応した商品力の向上、PB商品の開発力強化、スケールメリットを活かした共同調達によるコスト競争力向上、及び海外展開の強化を推進し、当社アパレル事業全体の飛躍的な成長と収益の最大化を目指してまいります。』『●本提携により想定されるシナジーとしては、まず、堀田丸正の「アパレル卸売業」としての側面から、和装・子供服分野を中心とした商品ラインアップの拡大により、当社グループ全体としてのお客様への提案力の向上、及び収益機会の拡大を想定しております。』『●一方、堀田丸正は意匠撚糸分野における国内トップメーカーであり、世界的な大手アパレル企業への供給も行う「アパレル素材メーカー」の側面も持っており、この観点からは、グループ横断的な商品開発、共同調達によるコスト削減、生産の効率化等のシナジーを想定しており、堀田丸正との緊密な連携を通じて、当社グループのアパレル関連事業全体の競争力の向上を目指してまいります。』


4 堀田丸正とRIZAPの事業シナジーの中心的要素

上記適時開示資料の一部をなすPPTスライド資料では、タイトル副題が「RIZAPアパレル事業のSPA世界戦略が本格始動」となっており、同資料5頁の図を見ると、堀田丸正がRIZAPアパレル事業において、特に1つ欠けていた「素材開発」というピースを埋め、かつ、海外販売を強化していくという役割を期待されていることが分かる。このことは、同資料8頁における堀田丸正とRIZAPグループのシナジー説明においても、堀田丸正側のシナジー要素として「・素材メーカーとしての強み」と「・12年以上の中国での生産・販売実績」という2点がピックアップされ、強調されているところである。


5 RIZAPアパレル事業グループ全体との多岐にわたるシナジー

ただ、上記シナジーはあくまでも概括的に、かつ中心的要素のみに言及したものにすぎない。同資料の11頁には「成長に向けた施策」として多岐にわたる記載があるが、これこそ堀田丸正がRIZAPアパレル事業に迎えられることにより想定される様々なシナジーを整理したものと評価することができる。

その内容を要約するに、①洋装事業の売上拡大(全国70店舗以上の百貨店及び全国400以上の専門アカウントを持つ馬里邑のネットワークを活用した拡販)、②意匠撚糸事業の売上拡大(馬里邑の商品開発との全面的な連携による、馬里邑と堀田丸正双方の売上拡大)、③新規顧客の開拓(馬里邑及びマルコ等との催事の共同開催、クロスセル等による拡販)、④EC展開の強化(夢展望との連携により、堀田丸正の小売転換も進めつつEC展開を強化し、拡販に繋げる)、⑤海外での販売拡大(堀田丸正の上海子会社を拠点として、RIZAPアパレル事業グループ各社の海外拡販を進める)、⑥RIZAPグループ各社とのその他の連携(マーケティング機能を活用した新商品販促、共同商品開発、CRM基盤を活用した商品企画力・販売力の強化、顧客DBの構築や販売管理システムの統合等による経営効率化の推進等)と整理することができ、相当な効果が期待されている。


6 RIZAPのM&A戦略に対する市場の評価

RIZAPのM&A戦略は、個々に見れば若干地味な印象を受ける面もあるが、一本筋の通った一貫性があり、また、事業ポートフォリオの形成の中で足りないピースを埋めつつ、RIZAP本来の強みを活かしながら、グループ内各社の相互シナジーを最大化させることに成功しているように見える。例えば、上記で社名の出てきたマルコや夢展望等は、RIZAPの傘下入り後間もなく黒字転換を達成しており、RIZAPの強調するシナジーが絵空事ではないことを、実際の業績をもって証明している。

RIZAPのM&Aを含めた好調さは、そのままRIZAPの株価にも反映されており、特に本年(平成29年)5月以降は騰勢を強め、平成29年7月11日現在では時価総額が2200億円超という水準にまで膨らんでいる。また、本件対象会社である堀田丸正の株価も、RIZAPの子会社化が発表された後に急騰しており、同日現在の時価総額は260億円超という水準に達している。

RIZAPの場合、創業者の持株比率が高率を維持しているという点も特徴的であり、RIZAPはM&A戦略の奏功により拡大するBSを柔軟な方法により活用して、今後も「COMMIT 2020」の(早期)達成に向けて前進することができるように見える。市場がRIZAPによるM&A戦略を評価していることは、少なくとも現時点においては、ある意味で当然のことと言える。


7 総括

RIZAPのM&A戦略、拡大路線は、それ程遠くない将来に「COMMIT2020」の再改訂が必要になるくらい、急速に進行するのではないかと感じさせられる。実際、RIZAPによるぱどの子会社化についても寄稿させて頂いたが、僅か3ヶ月前の時点では、RIZAPの時価総額は現時点の半分、約1100億円という水準であった。当時でも相当な水準であり、高評価を受けているという認識であったが、まさかたった3ヶ月間で時価総額が倍以上にも達するとは予想していなかった。

率直に感想を述べることが許されるならば、今回の堀田丸正の子会社化についても、それだけを単体の事実として見れば、やや地味な印象を受ける。しかし、ここにこそRIZAPのM&A戦略の妙味があるといえる。一見地味だが、まだBSは傷んでおらず、何か明確な機能を有している会社。そして、拡大するRIZAPグループの多岐にわたる機能との相互シナジーが見える会社。そういう会社に増資引受により資金を注入し、RIZAPの戦略に合う資金の使い方をし、短期間で経営再建の結果を出す。それが市場からも評価され、親会社子会社の株価が揃って上昇し、さらなる投資余力の増大をもたらす。このポジティブな連鎖のシナリオこそが、正にその妙味というものである。RIZAPグループと堀田丸正が、前述のような相互シナジーを遺憾なく発揮するならば、正にRIZAPにしかできない王道のM&A路線であると評価されることになるであろう。

 

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    小黒健三

    公認会計士

    小黒健三 やまと監査法人パートナー
    専門はアジアM&A支援。東大経卒後、旭硝子、北関東の外食企業を経て、1998年青山監査法人(PwC)入所。2013年1月に独立し、2015年からやまと代表社員。16年間の海外M&A支援実績130件超。共著に「アジアM&Aの実務」(中央経済社)等。人材育成塾「アジアM&A実行の実務」講師。

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    金子博人

    弁護士

    金子 博人 (東京弁護士会所属 / 金子博人法律事務所)
    事業承継、M&Aなど、ビジネス面でのサポートに力を入れています。今は、インダストリー4.0ないしIOTのマネージメントのコンサルタントに力を入れています。法務だけでなく、海外進出を含め、経営戦略を総合的に支援します。 2014年からは、新たに医療法人、学校法人のM&A,承継、相続に力を入れていますが、さらに、16年は、インダストリー4.0ないしIOTの支援に努力します。